ツイ夢ログ11

ごちゃまぜ



食満夢/
きりりとした目を閉じて静かに寝息を立てる先輩の顔を近くで見られるなんて、幸せだと思う。その一方どきどきと煩い胸の音に眠れないのは困ったものだ。どうしようかと考えて、先輩が寝ているのをいいことにその胸元へ耳を寄せた。近くなった体温ととくんとくんと鳴る心音が、とても心地よい。朝起きたときに先輩は驚くだろうか。恥ずかしいから出来れば自分が先に起きたいなぁと考えながらも元の体勢に戻ることは出来なくて、私はそっと目を閉じた。
「おやすみなさい、先輩」
どうか良い夢を。
……静かに聞こえるそのリズムが、ほんの少し早まった、気がした。





鉢屋夢/
「先輩、そろそろお昼ですけど何が食べたいですか?」
「んー……パスタ……」
「ちょっと待ってくださいね……今あるものだと和風パスタくらいしか出来ませんけど、それでいいですか?」
「きのこはー……?」
「あります」
「じゃあそれでー……」
「分かりました。それまでにちゃんと起きてくださいね」
「んー……」

「先輩、美味しいですか?」
「……鉢屋」
「はい?」
「あんた日に日に女子力上がってくよね」
「先輩は下がる一方ですけどね」
「私、鉢屋の作るご飯好きよ」
「私のことを好きだと言っていただいた方が嬉しいですが先輩のためなら幾らでも作りますし、籍を入れる覚悟もできてます」
「パスタうまー」





転生した不破夢/
「私はいま子どもだからこそ、子どもらしくあろうと思うの」
そんなことを考える時点で子どもらしくないよ、とは言えなかった。ずっと昔に大人になってしまった記憶があるんだから当然だ。僕だって、三郎や兵助よりはましだったけど、冷めた子どもだった。八や勘右衛門はまぁ、別にしておこう。
「だからね、雷蔵」
ぐいぐいと袖を引かれる。されるがままに身を屈めれば、僕の首に彼女の腕が回された。
「子どもの私をめいっぱい甘やかしていいのよ?」
「はいはい」
とんだ言い分だ。けれど僕はそれに従い抱き上げた。その小さな身体が震えているのには、気付かない振りをして。
僕や三郎、八たちはまた同じ年に生まれた。けれど彼女はずっと遅れて生まれてきた。理由は分からない。分からないから恐れてしまう。
「今日は一緒に寝ようか、久しぶりに」
「それは素敵ね!」
僕らが再び大人に近づいているのに未だ子どもの彼女は、無邪気の面を被らずにはいられないんだろう。





鉢屋夢/
「私は今とても悩んでいる」
「きっと下らないことなんだろうなぁ」
「一番人気のなさそうなフレーバー1種でトリプルを注文してみれば『うわ何こいつ……』という店員にあるまじき表情を引き出せるだろうか……と」
「本当に下らなかった!店員さんに迷惑かけないの、っていうか普通にアイス食べようよ……」





キャラ未定/
この手の温度を私は知っている。けれど私はこの人と手を繋いだことは勿論握手を交わしたこともない。これがはじめての筈だ。
「どうしたんだ?」
「いえ、何でも……」
振り返った彼の笑顔が夕焼けの陰に染まる。それが一瞬誰かと重なって見えて、私は手に力を込めた。――…もう、いなくならないで。





竹谷夢/
「夏も終わりだね」
「そうだな」
「でも一つやり残したことがあるんだ。一緒にしてくれる?」
「当たり前だろ。何するんだ?」
「ホラーゲーム」
「えっ」
「三郎に借りたんだけどすごく怖いんだって。一人じゃ無理だけどハチも一緒なら大丈夫だね!」
「……わざとか!」
「ふふ、言質は取ったよ!」





食満夢/
「保健委員は今薬草園にいるから、代わりに俺が手当てしてやる」
そういった経緯により私は食満先輩から手当てを受けている。手を取られて包帯を巻かれて、胸のどきどきは煩くなる一方だ。早く終わってほしい、ずっと終わらないでほしい。矛盾する思いを抱きながら食満先輩の顔を盗み見る。
優しいから、だろうか。こうしてくれるのは。もしかしたらと期待してしまうのは、私の想いが不純なせいか。
「食満先輩」
「ちょっときつかったか。巻き直そう」
「いえ……いえ、お願いします」
しゅるしゅると包帯がほどかれるのを眺めながら、私はほんの少し前の光景を思い出した。医務室の前で日干しされている薬草、中からは賑やかな会話。重石も乗せられていたそれを摘み直す理由なんてないだろう。じゃあどうして食満先輩は不在と言ったのか。もしかしたら帰っているのを知らなかったのかもしれないし、不運な彼らは思いもよらない理由で摘み直しているのかもしれない。
こうやって巻き直される前の包帯も、きつすぎず緩すぎもしないものだった。それをほどいてしまった理由は何だろう。まさか包帯に関して完璧主義なわけでもないと思うのだけれど。……そんな風に不思議には思っても、私にそれを訊く勇気はなかった。
「今度は緩いか?」
食満先輩はきっと優しいひとなんだろう。それなのに、その優しさに甘えるように、少しでも一緒にいたいからなんて不純な理由で頷いてしまう私は、きっととても悪い子だ。





食満夢/
特に理由はないけれど、強いて言うならカラフルなショーケースについ惹かれて、ケーキを二切れ買った。留三郎の好きな甘さ控えめのチーズケーキと、ハロウィン仕様のパンプキンケーキ。今日は留三郎が泊まりに来るからそれはデザートにしようと冷蔵庫に入れる。そうして晩御飯の準備に取りかかった。
その、数時間後のことだ。
「……すまん」
「すごく嬉しいんだけど……」
向かい合う私と留三郎の間にはケーキの箱、ふたつ。まさか手土産を持ってきてくれるなんて、それがまさかケーキだなんて。とりあえずと開けた箱の中には秋限定のモンブランと私の好きなフルーツタルト。私の好みを把握してくれているのがとても嬉しい。
「全部食べちゃう?」
「それはさすがに無理だろ」
結局一切れずつは明日にすることにして、私はフルーツタルト、留三郎はチーズケーキを選ぶ。そっちも美味しそう、なんて思ったのがバレたのか「ん」留三郎がフォークに乗った一口目を私にくれた。美味しい、と頬が緩めば、留三郎が笑う 。お返しにと同じようにしてこちらも差し出せば、それを食べた留三郎の表情もちょっとばかり緩んで、私も笑う。美味しくて甘いケーキと留三郎の笑顔が、とても幸せ。


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