潮江先輩がお菓子をくれる話

会計委員会のお手伝いをするようになって、驚いたことがひとつある。

「あ、これ、お団子ですか?」
「……たまたま貰った。お前達で食っていいぞ」
「わぁっ!じゃあ、お茶を淹れてきますね」

潮江先輩が、お菓子をくれるのだ。『たまたま貰う』ことが頻繁にある筈もないから先輩が買ってきているのだろうけど、意外。 厳しいひとだと思っていたけれど、後輩に優しいところもあるのだなぁ。
そう田村くんに零してみたら、田村くんは微妙な顔をして笑うだけだった。そして他の子には、特に会計の一年三年には言わないようにと約束させられた。

「……んですけど、どうしてでしょう?」

他が駄目なら本人に、と訊いてみれば、潮江先輩もまた微妙な顔をする。怒らせてしまったか。やっぱり本人に直球はまずかっただろうか。いや、そんな話で時間を取らせたことの方か。
謝るべきかどうするかと考えていると、潮江先輩が先に口を開いた。

「……団子は嫌いか?」
「え?いえ、好きです」
「そうか、ならいい」

そのまま潮江先輩は顔を背ける。話はそれでおしまい、らしい。質問の答えは貰えなかったがこれ以上追求することもできるわけがなかった。

……そんなことを思い出しながら団子を一口。今日も潮江先輩がくださったものだ。

「美味いか?」
「はい」
「そうか」

ならいい、と潮江先輩はやっぱり顔を背けてしまう。そういえば先輩は召し上がりにならない。先輩は団子がお好きじゃないのかしら。今度田村くんに聞いて、私が用意してみようか。迷惑になるならやめておくべきだろうけど。
それにしても、今日も団子がとても美味しい。





「朝子先輩がいらっしゃるとお団子が食べれて嬉しいです」
「そうか団蔵それは潮江先輩にも朝子先輩にも言うなよ」
「どうしてですか?」
「いいからこれからもうまい団子が食いたければそうしろ」
「よく分からないけど分かりました」



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