幽霊な食満

夏休みの間だけキャンプ場でアルバイトすることになった私は、早速困ったことになっていた。

山奥で携帯電話の電波が届かない?メール無精でケータイを携帯しない派の私には問題ない。
虫?蜘蛛も蜂もカメムシも、皆が恐れる例のあれ退治に新聞紙さえあれば充分な私には問題ない。
風呂も着替えも体力もエトセトラエトセトラ、勤務に関わることで困ることなんて無いと言い切る私が困っていることとは、端的に言えば不審者である。

「不審者、というのは説明として不充分かと思うが」
「心読まないでください」
「聞こえるものは仕方ないだろ?」

はは、と仕方がなさそうに苦笑する不審者は、もう少し詳しく説明するならば、ちょっと透けている。いわゆる幽霊だろう。手を伸ばせば当然のようにすり抜けるその身体は、正直気持ちが悪かった。

「せめて気味が悪いと言ってくれ」
「気持ち悪いものは気持ち悪いので」
「俺が生きていたら多分デコピンの餌食になってるぞ」
「生きてたら気持ち悪いなんて思いませんよ、多分」

さて、私が困っているのは、幽霊に会ってしまったから、というわけでもない。霊感なんて欠片もなかった私ではあるが、この幽霊は喧しくても実力行使に出れないのが不満なくらいで困るというほどではないのだ。考えていることを読まれるのは多少困るかもしれないが、今のところは関係ないとして。

「それで、お名前、何でしたっけ?」
「留三郎。食満留三郎だ」
「食満さん。とりあえずとっとと成仏して、それを返してもらえませんかね」

困っている理由。それは、管理小屋の鍵を取られたということであった。





(このあと成仏するためになんやかんや/力尽きた)


×
- ナノ -