暑がりな六は ・夢小説じゃない。 ・もしかしたらBLってるかもしれない。 それでもよろしければどうぞ↓ 暑い。 留三郎は息を吐くと首に掛けた手拭いで額の汗を拭った。拭ったところで熱気のこもった部屋と背中の熱源のせいですぐに滲み出すのだからどうしようもない。槌も汗で滑り作業も捗らず、もう修理は夜に回そうかと工具を片付け始めた。 とにかく水でも浴びるかと体を揺すれば、ずるりと熱源が背中からずれ落ちる。ごんと何処かをぶつけたような音がして、留三郎はちらりとそれに目を向けた。 「……大丈夫か、伊作」 「痛た……退いてほしいならそう言ってくれよ」 「ずっと言ってたのに退かなかったのは誰だ」 「留三郎は体温低いから」 そんな理由で引っ付かれては堪らん。留三郎は幾分熱の発散が可能になった背を伸ばした。なおも腕に触れようとする伊作の手を掴みながら腰を上げると、伊作の腕を引いて立ち上がらせる。ぼんやりしている彼に「井戸行くぞ」そう促した。 「水浴びようぜ、水」 「ああ、じゃあ手拭いがいるね」 「すぐ乾くだろ」 「駄目だよ、風邪引いたらどうするんだ」 のろのろとした動きで手拭いを取りに行く伊作を待ち、自分の分だと寄越された手拭いを受け取る。首に掛けたままの手拭いは水につけて冷やしておこうかなどと考えながら、井戸へと向かった。道中通り掛かったい組のふたりの部屋から仙蔵の癇癪声が聞こえた気がしたが関わらないが吉である。 早いところ夜にならないだろうか、夜は夜で蒸し暑いのだろうが、直射日光がなくなるだけで気分的には随分ましになるだろうに。そんなことをつらつらと考える留三郎に、「見て見て」伊作が指差し注意を引かせた。塀の側、茂みの方に、小さな影がよっつ。 「伏木蔵たちが日陰ぼっこしてるよ」 「本当だな……風通しもよさそうだし、涼しそうだよな」 「水浴びたら行ってみようか。混ぜてくれるかなぁ」 伏木蔵だけでなく平太もいるのだから大丈夫だろう、きっと。そうと決まれば早いところ井戸へと行こうと足をほんの少し早める留三郎に、待ってくれと手を伸ばした伊作が足を滑らせて転んだ。相変わらず不運というか何というか。留三郎は息を吐き、あははと苦笑する伊作に手を差し伸べる。あまりに熱い伊作の手に、しかも離そうとしないその手に、ほんの少し後悔した。 ← ×
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