追記
(伊作視点)
僕の知らない間に留三郎が彼女を名前で呼ぶようになっていた。きっかけはきっとあの天気予報が外れた日だろう。あの翌日妙に浮かれている留三郎がいたから、多分間違いない。追い払うように帰されたから何かあるのかと不思議に思っていたけれど、彼女との仲を深める企みがあったのなら正直に言ってくれればよかったのに。まぁ留三郎にも思うところがあったんだろう、不運に巻き込まれるわけにはいかないとか。翌日持ってきてくれたコンビニ菓子が美味しかったから、別にいいけど。
後になって聞いた話によると、彼女は留三郎の幼なじみで初恋のひとだったらしい。かくかくしかじかで疎遠になって、でもずっと好きで、ようやく踏み出せたとのこと。友として祝福し、応援してあげるべきだろう。まだまだ不安そうにすることもあるけれど、きっと留三郎なら大丈夫だ。彼女の笑顔を見るに、彼女も似た気持ちでいるだろうから。
「今日傘ある?入れてくれ」
「仕方ないなぁ、とめくんが持ってね」
そんな会話が聞けるようになるのも、もう少しだけ、先のこと。
2015/05/24
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