買い物帰りうさとら | ナノ
※ 二人で買い物の帰り道。







「好きです」
 そう耳元で押し殺したようにひとことあいつが呟いた。背に感じる熱がこちらにも伝染してしまったのか急に血の巡りがよくなって鼓動が馬鹿みたいに早くなった。おいおいちょっと待て、さっきまで俺達何してた。いつもみたいに言い争いながら歩いてなかったか。突然の言葉に何も言い返せずに固まっていると、後方から伸びた腕により強く拘束される。やけに心臓の脈拍がうるさいと思ったら、それは自らが発する拍動ではなくて背中に張り付くあいつから感じるものだった。すげえことになってんな、そう茶化そうとして口を開いたら、予想外に熱い自分の吐息に驚いて声を失った。手が震える。両手で抱えるようにして持っていた紙袋が手からすり抜けてしまうのではと不安になって形が変わるのも厭わず握り締めた。まったくいい歳した大人が路地裏で何やってんだか。落ち着け鏑木虎徹、若造のペースにハマるんじゃあない。一度目を閉じて深く息を吸い込む。はあっと息を吐き出せば脳が落ち着きを取り戻したかのように熱が引いていく。
「なあ、バニーちゃん」
 やっと出た言葉が震えて情けないが今はそんなことはどうでもいい。しつこいくらいに訂正を入れてくるその愛称を呼ぶが、背中からの応答はない。その代わりに、背から伝わる鼓動が心なしか早くなって、ああこいつ緊張してんだな、と心の中で呟いた。もう一度呼びかけて、どうしたんだよと聞くと、しばし間が空いて、なんでもありませんと首筋に擦り寄られた。その擽ったさに身を捩りながらホントなんだよと背に投げかける。しかしそろそろ離してもらいたい。とにかく、ここは室内ではなく屋外なのだ。いくら人通りが少ないとは言え、誰かに見られる可能性というものもそう低くはない。こういうことはどちらかの家ででもやればいいだろう。紙袋を片手で抱えなおして な、バニーちゃんと再び呼びかける。またもや無反応なそいつの頭を空いた手でわしゃわしゃと撫でてやれば、そいつのびくりと体が震えて体が熱から解放された。そのまま無言で俺を追い越して歩き出す背中に「何、甘えてたの?」とにやける顔を隠さず訊ねると、「そんなんじゃありませんよ」と振り向きもせずに奴が返した。
「じゃあ何なんだよーっ」
 そう言って離れた背中にタックルをかまして顔を覗き込めば、真っ赤になったバーナビーの恨めしそうな目と視線が合致して、我慢できずに噴き出した。









2人で仲良く買い物でも行ってればいいじゃない。甘え下手なバニーちゃんとそんなバニーちゃんが可愛くてしょうがないおじさん。精神的には虎兎な兎虎が美味しいですmgmg!