6話でニカミチ | ナノ
※ イナゴ6話で道也さんが道也さんがウワアアアアア!!!となったのでそれをニカミチで妄想してみた。








「明日が来なければいいのに」

ぎゅ、と抱きしめられて鳥肌が立つ。そうだったらいいのに、と再度耳元で繰り返された言葉に骨の芯から溶かされそうになる。
この男の声は麻薬だ。たった一度味わってしまえば快感の虜になる。そして、もう一度味わいたいと手を伸ばせば何も知らなかった無知純白へは帰ることは出来ない。ぐ、と後ろへ引く力が強くなって名前を呼ばれる。震える手で肩を包む自分よりもほんの少し太い腕に手を伸ばせば生温い舌がぬるりと耳介の奥へと入り込んできてぴちゃりと水音を立て這い回る。その行為にぞわぞわと競り上がって来るものを喉元で必死に堪えれば、息を吹き掛けられて う、とくぐもった悲鳴が自らの鼻を抜けていく。

「貴方は忙しいから、明日になれば、俺の前から居なくなってしまうから、」

だから、と頚椎に彼が額を当てる。10年前ならば感じなかった熱を持った皮膚同士が擦れる感覚に、また更に体温が上がったようだ。熱を体外へ排出しようと熱い吐息を吐き出せば、彼の腕にもその熱さが伝わったのが背中で脈打つ鼓動が早さを増した。
触れ合った部分がじわりと汗を滲ませ、荒い息が部屋の内を支配する。久遠さん、久遠さん、久遠さん、

「…道也さん」

体を拘束していた腕の力が抜け、心臓に宛てられた手がするりと上がり顎を掴む。彼の顔を見ようと流れのままに身を翻せば、初めて会った頃よりは皺が増え更に優しくなった目が微笑んだ。その目の先に映る俺も人の事は言えたものではなく、弛んだ目尻と髭が滑稽に見えた。それでもあの頃と変わりなく自分が彼の瞳に映って居ることが嬉しくて、そうは言わないまでも彼の頭を引き寄せてキスをした。

「愛してます、修吾さん」

(明日が来なければいいのに)
彼の言った言葉を反芻して、まったくだ、と自嘲した。明日も、明後日も、明々後日も、来なければいいのに。
(優しい貴方は、俺の明日など心配しなくていいんだ)
だから今日は貴方を下さいと首筋に噛み付けば、健康的な肌に赤い噛み跡がついてやけに興奮した。それは彼も同じだったらしく、頭を抱え込まれて荒々しく唇をぶつけられる。そう、それでいいんだ。貴方は何も知らず、俺を求めてくれれば、それで。

『愛してます、修吾さん』





優しい貴方が明日の俺を知って、
深く傷つかないように 明日など来なければいいのに。















今日は試合ですね、頑張って下さい!とニカッと笑う修吾さんを受信した。