なんだ、リア充か。速やかに爆発してください。 | ナノ
ついったーお題にて。















「なんでとか、考えたこともありませんでしたわ」
 クラスも違う。家を出るタイミングも、ぶっちゃければ“普通の”学校生活において、彼 勝呂竜士と俺 志摩廉造の接点は「関西弁」、まあそんなところだけである。
 それは昔からのことであって、子猫丸は別として、俺はいくら勝呂竜士、座主様をお守りしろと言われたところで普段からベタベタする気などは全くなかった。
 好きやけど、いつも一緒に居るちゅうのはちょお違う気ィしますやん?

 そんな風に語り口調で饒舌に笑った志摩が俺の左胸にペとりと手の平を張り付ける。汗をかいてべたつくそこに密着した他人の体温が煩わしい。煩わしいはずなのに、その腕を引き寄せて俺はキスを強請る。それに気分をよくした志摩が口端に伝う汗を舐め取って俺の頬へキスを落とす。
「坊、好き」
 とろん、と蕩けた瞳で志摩が呟いた。細められた瞳からは俺の顔が見えない。恐らく、自分も志摩と同じ顔をしているのだろう。
 誰もいない室内、二人だけの空間。そんな俺とこいつだけが共有している時間が愛おしくて、再び零れた愛の言葉に、志摩の額に唇を押し付けて答えた。俺も、好き。
 しま、好き。
 ぐしゃぐしゃになったシーツが背中で擦れて気分が悪い。上半身を浮かせて身をよじれば、散々にこき使った下半身が鈍い痛みを放つ。回数を数える暇もなく愛し合った。お互いが何度愛してると口にしただろうか。何度互いを求めて果てただろうか。明確な答えも出ぬまま未だその甘く怠い余韻に浸っていれば、俺を組み敷いた男が額の汗を拭い、ピンクの頭をぶるりと振るう。飛び散る汗に冷たい、と文句を言えば、すみません、そして再び好きだ、と。
 しゃあないな、俺はそう言って笑った。

 志摩と勝呂って、塾以外で話すんのか?
 そういえば、奥村にそんな事を聞かれた事があった。祓魔塾に通うようになって、人前で志摩と話す事が幾分か増えた。そんな風に考えていた矢先だった。
 一切意識などしているつもりはないのだが、恐らく根本的な性格の不一致と言ったやつだろう。昔から俺と志摩は学校や家、そういった人前で会話を交わすことがあまりない。志摩は志摩で俺に説教を食らうのを煩わしいと感じることもあるだろうし、俺もわざわざ口を尖らせてまで話すのは好きではない。
 あー、そりゃあ多少はな。
 だから奥村にはそんな風に答えた。そうだ、多少は話す。それは人前で、だけの話でしかないのだが。
「へー、なんで?」
 だから、奥村にそう聞かれた時は、ハァ?と素っ頓狂な声を上げてしまった。何故。そう聞かれても理由は答えるほどのものでもなく、ただ頻繁に話すだけの会話も、時間もないだけである。言葉を失った俺の顔を覗き込んで奥村が首を傾げる。大きな瞳に間抜けな面をした俺が映って、瞬きと共に失せた。だってさ、と奥村が言葉を続けた。


「俺も、思う」
「はい?」
 突然口を開いた俺に、志摩が首筋に埋めていた顔を上げた。何がです?と汗で額に張り付いた髪をはけながら聞いた志摩に、いやな、と答える。
「俺も、好きやからってずっと一緒に居るんは、疲れるから嫌や」
 せやから今くらいがちょうどええわ。そう言って笑えば、志摩がブッと吹き出して、そうですねと歯を見せて笑った。普段は我慢しとりますから、今だけは。何度目か、重ねられた唇に、俺は目を閉じた。


『だってさ、お前等よくお互いのこと見てるじゃんかよ』








お題:みんなの前=殺伐、二人きり=イチャラブ