それ譲ったってください!…ええやんか少しくらい!奥村せんせのドケチ!うんこ! | ナノ
マンドラゴラがなんだって?媚薬?













 熱い。身体が熱い。ズボンを押し上げる熱がはち切れんばかりに膨張し、解放を求める。その痛みに志摩は顔を歪めた。
「…っ、しま、お前…何を、」
 しかし、それは目の前の彼も同じようで、びくびくと肩を跳ねさせ、顔を紅潮させ、今にも零れそうな涙を堪えてこちらを睨みつける勝呂に、志摩は無意識のうちに渇いた唇を舐めた。
 何をって、ナニに決まってますやん。
 そう笑いながら壁に預けていた背中を起こした。軋む床を踏み締めて一歩また一歩と勝呂へ近付くと、理性の間で揺れる瞳が恐怖の色をちらつかせてとても惨めだった。

 唐突なキスに驚いた勝呂が、舌を差し込まれた恥ずかしさの余り志摩を突き飛ばしたのはつい先程の事だった。唾液とともに咥内に送り込まれた苦い液体を飲み込んで、壁に持たれたまませせら笑う志摩に文句を言っていた勝呂の息が突然詰まる。
 その様子を待ち侘びていたかのように目を細めた志摩と、わけがわからずわなわなと唇を震わせる勝呂。吐き出される吐息の熱さに勝呂がこれは何かと志摩へ問えば、はぐらかされ、立ち上がった志摩はもうすぐ目の前だった。
 坊、と耳元で名前を囁かれて、勝呂は身体を走り抜けた悪寒にも似た感覚に声を漏らした。身体が熱くてどうしようもない、この感覚は、知っている。だがどうして今なのだ。自分と志摩は、先程まで二人で倉庫の片付けをしていたはずなのに。
 ガタン、と背中に物が当たる音がして振り向けば、すぐ後ろには倉庫に付属された大きな棚があって、逃げ場のないことを理解した勝呂の脳が熱を失っていく。これは、あかんやろ。坊、と低い声で名前を呼ばれれば、堪えていた涙がぼろりと零れた。
「…しま、やめ…っ俺、おかしいんや…」
 熱くて、苦しくて、自分がどうにかなってしまうのが恐くて、志摩の身体を押した。その手にも最早力が入らなくて、情けなさに眉を寄せた。
 そんな自分を見て、坊ホンマかいらしいわあなどと馬鹿にしたように言う志摩を睨みつければ、志摩が媚薬ですえ?と笑った。媚薬。その言葉が一瞬理解出来なくて、勝呂は目を丸くして間抜けな声を漏らした。
「奥村せんせからもろたんですわ。なんやよく聞けば媚薬の効果もあるゆうて」
 身体、熱いやろ?と志摩の手が頬に触れて、勝呂は身体を震わせる。媚薬、ならばこの熱は。
 お前大概にせえよ、と奥歯を噛み締め志摩を睨む。この情事のそれと似た身体の高ぶりは、こいつが飲ませた、あれは。
 勝呂の頬に触れていた志摩の手が首筋をなぞり鎖骨に触れて、勝呂はヒッと息を飲んだ。そんなに恐い顔せんといてください。
「楽しもうや」
 坊、愛してます。そう言って重ねられた唇が火傷してしまうのではないかと思うほど熱くて、勝呂は震える手で志摩のシャツを掴んだ。息を吐き出すために開いた唇の隙間から志摩の舌が侵入してきて上顎をくすぐる。互いの舌を絡めて、勝呂の耳から脳へその卑猥な水音が伝導されれば、その脳内で、ぷちんと何かが切れる音がした。








ごめんなさいいつか続き書きます。