隠すな、どうせすぐばれる。 | ナノ












 テメー、俺が好きか。

 その一言を言えさえすればここまで思い悩むことはないのに、とキッドは自慢の真っ赤な髪をぐしゃぐしゃと撫でた。枕元の時計に目をやればもう昼である。昨日は久々に敵船と派手にやり合ったこともあり、夜中まで大宴会だったのだ。
 起き上がりくあっと伸びをしてベッドから立ち上がると、ほぼ同時にノックが聞こえ、キッド、と自分の名前を呼ぶ低い声が聞こえた。
「いいぜ、入れよ」
 着慣れた真っ赤なコートを羽織り、椅子に深く腰掛けて扉へ言うと、ガチャリとドアが開いてキラーが顔を覗かせた。おはようキッド、よく眠れたか?そんな風に声をかけられて、キッドはお前は母親か、とキラーに笑いかけた。
「昨日は久々にはしゃいでたからな。よく眠れたようで安心した」
 喉を鳴らしながらキラーが言い、キッドへ軽く首を倒してみせたあと扉の向こうに顔を出し誰かへ手招きした。誰が居るのだろうかと首を傾げてから、部屋へ入ってきた聞き覚えのある嫌な足音に、キッドはあからさまに嫌な顔をした。
「何しに来たんだよ…せっかく楽しい一日になるとこだったのに」

 溜息をついてキラーに目配せすると、キラーが何も言わずに部屋を出ていった。キラーはその男とキッドの関係を知っていた。いや、他の船員も薄々は気がついているんだろうが、核心づいているのはキラーだけだ、とバタンと閉まった扉に思いを馳せる。物分かりのいい右腕だとは思うが、船長としてはもう少し我が儘を言ってほしいものである。
 そんなことを考えているうちに、ヒールを鳴らして歩幅の大きな足音が近づいて来るのを感じて、キッドは舌打ちをした。
「よォ、ユースタス屋」
 逢いたかったぜ、と元々歪な形をしていた薄い唇が愛を吐きだしたのを目の当たりにして気分が悪くなった。こいつの身体のパーツ一つ一つは人が嫌悪を感じるように作られているかのようで見ていて腹が立つ。先程の言葉も、声も、仕種も。
「俺は逢いたくなかった」
 クソファルガー。そう吐き捨てるように言えば、ローって呼べよと検討違いな台詞が返ってきて黙れクソファルガーと繰り返す。椅子の脇まで歩を進めたローがキッドの頭を抱いてトレードマークの赤髪にキスを落とした。そのままキッドの腕を軽く引く。
 キッドが大人しくその腕に引かれ立ち上がれば、ローは楽しそうに笑った。深い隈に縁取られた瞳は相変わらず瞳孔が開き気味で生の色を示していなかったが、それでもローの喜怒哀楽の見分けがつくくらいにはキッドとローは深い仲になっていた。

 起立すると身長差で自然とローを見下ろす形になって、いつものように威圧的にその男を睨みつけてみるが、楽しそうにキッドの頬に冷たい手を寄せた男には全く通用せず、ばつが悪い顔を隠そうとキッドは自らローに口づけた。
 ローの背中に腕を回しながら、相変わらず貧相な身体してんなァ、とぼーっと思った。それに気付いたローが半開きのキッドの咥内に舌を差し込み嬲る。その動きにキッドが背中を震わせれば、ローの手がそこを滑った。
「実は今日は殺戮屋の招待があってきたんだ。」
 舌を解き、息を切らすキッドがベッドに腰掛けながらローを見上げた。息一つ乱れないローが口の端の唾液を舐めとりキッドの足の間に身体を割り込ませる。邪魔だ、と言ってキッドがローの頭の上の趣味の悪い帽子を睨みつければ、お前のこれも邪魔だ、とローがキッドの頭からゴーグルを抜き取った。
「で、キラーがなんでお前を呼んだんだよ」
 赤いコートを脱いで椅子に放り投げながらキッドがローを怪訝そうに見つめる。キッドの首筋に顔を埋めながら、ローはさぁ?と曖昧な返事を返した。
「さあってなんだよ、あとあんま跡付けんなうぜえ」
「俺も知らねぇんだよ。あと俺に指図すんな犯すぞ」

 どっちにしても犯すくせによく言うよな、とキッドがローの服をまくりながら言えば、ローが息を弾ませて笑った。よくわかってるじゃねえか、ユースタス屋。耳元で囁くように言われて身体が跳ねた。背中から腰に甘い痺れが走って蓄積する。その行為にキッドが熱い吐息を吐き出せば、ローが満足そうに喉を鳴らした。
「ただ、テメーが悩んでるみたいだから俺に聞き出せ、とかは言ってたな」
「っはあ?誰が、悩んでるって…?」
 肩を押されて素直にベッドに背中を付けてキッドが呻く。なんか悩んでるか?と聞かれてうーん、と唸る。
「べつに、悩んでねえけど…」
 その答えに、ローが時間をおいてそうかと答えた。
「じゃあ質問を変えるが、ユースタス屋、俺になんか聞きてえことあんだろ」
 その言葉にローの身体を擦っていたキッドの手が止まった。やっぱりな、と笑うローにキッドが困ったような視線を向ける。
 生気のないその目がこんな時ばかり自分を映すのが気に入らない。すべてを見透かされているかのようで、キッドは居心地の悪さにその瞳から目を反らす。

「言ってみろ」
 まあ答えられる範囲で答える。それに感づいたローの額がキッドの額にごつん、とぶつけられて、至近距離で見つめ合う。ここまでされたら仕方がないと、キッドは仕方なく重い口を開いた。
















糖度高めなロキド。ついったのお友達に捧げます。
トラファルガーの気持ちを確認したくて悩むユースタス屋とかマジ可愛い禿げる!