※ 子猫さんの片思いです。 　人を好きになることがこんなに辛いとわかっていたら、自分は、彼に心を開いたりしなかっただろう。こんな気持ちは初めてだった。知る術も持たず、教えてくれる人なども子猫丸の傍には居なかったからだ。 　みっともない。本当に、みっともない。 　小さな体を更に丸めて、子猫丸は自らの体をたった二本の細い腕で抱きしめた。零れる涙も溢れる嗚咽も止める事は出来ずに、鼻腔を満たした鼻水を吸い上げるとその奥がツンとした。 　気付いたのはここ最近の事だった。飄々としていながらもまめで、根は真面目で魅力的な彼に、自分は気が付けば惹かれていた。同性でも惹かれるほど、彼は素敵だった。それは子猫丸がこの恋を一切否定する気がないことからも窺えていた。 　初めは話して居るだけでよかったのだ。姿を見かけ、二人で他愛もない話をして、二人で勝呂を迎えに行く。それだけでよかったのに、人間とはどこまでも愚かで、どこまでも欲深い。全くその通りだと思う。 　そこにはいつの間にかこの関係に満足出来なくなった自分が居た。これだけでは足りない、満たされないのだと与えられるのを待ち侘び、満たされないのだと知り切なさと空腹感に奥歯を噛み締める。気が付けばそのうち堪えきれない何かが胸から競り上がってきて、角膜を濡らした。喉元からは言葉にならない呻きが堪えず零れ、体は震え、閉ざした視界の奥に一人ぼっちの自分だけが鎮座していた。 　今、顔を上げれば困りきった彼がいつもの作り笑いで自分に微笑んでくれるだろうか。どないしはったんです、子猫さん？そんな風に優しく笑いかけて頭を撫であやしてくれるだろうか。そんな期待をしている自分が浅ましく滑稽で、次々と湧き出る涙は止まる気配がなかった。 「惚れてしもうて、ごめんなさい」 　きっと彼には届かない。搾り出した声は嗚咽に混じって再び自分の心に蓄積された。ごめんなさい、ごめんなさい、謝罪の言葉しか浮かばなくて、額を膝にこすりつける。 「ごめんなさい」 　この気持ちが届く事はないと知っていながら、君に愛を請うこの僕を、どうか見捨てないで下さい。 「志摩さん、好きです」 恋に振り回される自分が賎しくて仕方ないです。恋が恋愛に発展するその日まで、 第３回BLove小説・漫画コンテスト結果発表！ テーマ「人外ファンタジー」 - ナノ -