こんな気持ち知らない恐い恐い恐い恐い | ナノ









 真っ直ぐなものは嫌いだ。自らの大切な芯の部分を屈折させた感情で必死に押し殺し隠しても、それはその間をうまく潜り抜けて1番弱い部分を刺激するのだ。その刺激は暗闇に差し込む一筋の光のように眩しく、温かく、俺には有害なものにしか思えなくて、無我夢中で拒絶する。今まで守り固めてきたもの全てがもし一瞬にして崩れ去ろうものならば、俺は何に縋って生きていけば良いのだろうか。

「おまえなんか嫌いだ」
「…京介」
「うるさい、呼ぶな」
 気安く、人の名前を呼ぶな、と顔を伏せて隣のあいつに告げる。目眩がするのだ、頭も酷く痛む。様々な言葉が脳内へ溢れだしキーキーと金切り声となって喚く。蟀谷を抑えれば、今度は二度と見るものかと心の奥にしまい込んだ光景が次々と網膜の裏側に映し出される。ああ、畜生。何だって最後にあいつの笑顔が浮かび上がるんだよ。
「もうどっか行け、顔も見たくねえ」
 声も聞きたくねえ、だから早くどっか行けよ、と目眩から生じた吐き気に閉じかけた声帯を無理矢理開いて絞り出す。こいつを見ていると、無性にイライラして、やけに落ち着かなくて、自分がどうにかなってしまいそうで。不安なのだ。とにもかくにも我が身は大事で。こいつは危ない。そう俺の本能が告げているのだ。松風天馬を排除しろと。だから、頼むから俺の視界から失せてくれ。
 そんな俺の言葉に耳もくれず、俺の隣から立ち去ろうともしないそいつにもう一度「消えろ」と冷たく言い放つと、少しの沈黙の後、あいつがなぁ京介、と静かに俺の名前を呼んだ。
「じゃあ何で俺の服掴んで離さないんだよ」

 パキリと音を立てて壊れた。内側から溢れ出るものが何かなんて、知るよしもないというのに。
























京介くんが天馬にデレるのはいつですか?