流行りなど知りもしないだろう。 | ナノ
※ 連載にしようと思ってたお話。












 好きだ、だの、愛してる、だの、そんな言葉は必要ないと思った。今まで生きてきた中でそんな事は散々言ってきたし、この歳で、しかも同性にそんな言葉を言おうとは思っていなかった。それは彼らにとって暗黙の了解であり、触れてはならない部分でもあった。久遠には養子がいるが、それでも彼らは今まで番を持たずに生きてきた世間一般からすれば悲しい独身男性であり、愛を求め寄り添い何かに縋り、依存する事は、この歳には恐怖でしかなかった。そう考える時点で十二分お互いに依存しているわけだが、一緒になりたいと強く思った女性が居たとして結局そこまで成り立たなかった彼らである。当然その気持ちに気付くわけがない。
 それでもお互いに相手に感じるこの愛しさは何だろうかと疑問を持たずには居られなかった。初めは月に一度二度会い酒を飲み、身体を重ねるだけだったが、それがいつの間にか週に3回は長電話までするようになっていた。互いの家で会うようになり、無理をしてまでもセックスの回数を増やした。それでも彼らはその心の声を互いに伝え合うことはしないのだ。後ろからしか久遠を抱くことが出来ない虚しさを二階堂が言葉にすることもしなければ、久遠も汗が伝い色気を発する二階堂の首筋に噛み付き所有根を残す事をしなかった。なんと不器用なのだろう。

 しかし、彼らが愛し合う事は必然だったのだ。
 嗚呼、もしもあの時雨が降らなければ。雨に濡れた彼を見つけなければ。いつもは夜しか会わない相手が、陽の光を見上げ、眩しそうに目を細めて笑うのを見てときめきを感じてしまわなければ。これが恋だと、気付かなければ。

 ロマンチシズムを掲げる恋人達は口を揃えて言うだろう。それはきっと、運命なのだと。














私の中でニカミチは雨のイメージがあって、雨をテーマに一人ニヤニヤ妄想していた気がしました。