キスの日ニカミチ2 | ナノ






 冬花の作ったご飯を腹に入れて二階堂さんの家へと向かった。彼の家まではそう遠くはない。満腹感に欠伸をしながら彼の家の呼び鈴を鳴らすと、はーいと言う返事の後ガタガタと騒がしい音がして戸が開いた。
「お待ちしてました、さ、どうぞ!」
 いつもと変わらない恰好の彼がそう言って俺を中へ誘導した。いえ、携帯だけ、と言いかけてやめた。明らかに胸が苦しい。背を向けたこの男に欲情している。
「すみません、お邪魔します」
 それは久々に逢ったのだからしょうがないなと言われるまま素直に家へ上がらせてもらった。久々に逢った彼は相変わらず無精髭を生やした中年で、でも同性の自分から見てもかっこよくて、馬鹿みたいにときめいた。こんな歳になってもそんな風に胸がときめくものなんだなと自嘲気味に笑うと、携帯持ってきますんで居間にでも行ってて下さい!と言われた。その背を捕まえて振り向かせた。どうかしました?と笑う彼の頬にキスしてありがとうございます。というと、真っ赤になった二階堂さんが変な声を出して身じろぎした。
「な、なんですか!いきなり!」
「したくなったんだから、しょうがないでしょう?」
 そう、しょうがないのだ。久々の彼が愛しくて、欲しくて。それなりに覚悟を決めてここに来たせいもあるのだろうが、なんとも言えない気分になる。しかしそこまで真っ赤になられるとこちらも恥ずかしくなるというもので、逃げるようにしょうがないと繰り返して居間へと身を翻すと、腕を引かれて抱きしめられた。

「あの、携帯はあとでいいですか?」
 ぐい、と腰を引き寄せられて我慢出来ませんと彼が力無く笑った。
「いつでもいいですよ」
 こちらも砕けた笑みで彼の首へと手を回せば、どちらからともなく唇を合わせた。












キスの日ということで。まとめる気はありませんでした。裏は間に合う気がしませんでした。