甘えさせて不目 | ナノ
※ 不動さんがエグい下ネタやらかしてます。






 バン!と荒々しく開く扉、殺しもしないけだるそうな足音。望みもしない来客の正体は振り向かなくともわかっている。僕は必然的にノート上を走るペンを脇へと置いた。君は助かってくれ、そう願いを篭めて。
「―…あのですね、不動くん」
「あ゙ぁ?」
「煩いです。君のその態度はいちいち癪に触るんですよ」
「…うるせェのはどっちだよ」
 振り向いて扉は静かに開け閉めして下さい(あと踵を引きずって歩くのはやめてください、貴方ヤンキーですか)と注意すると、眉間の皺が一層濃くなり、あーめんどくせーと手を払った。
「せっかくこの俺が、朝から晩まで扱かれてくたくたな俺様が、一日口しか動かしてねぇようなテメーの所に来てやったっていうのにいちいちつまんねーこと言ってんじゃねぇよ」
 そう人の悪口を言った彼の手が僕の肩にかかった。近付いてくる彼の顔に心臓がどきりと跳ねた。伏せた睫毛が意外に長くて色っぽくて困る。逃げようと顔を退けると、片手が後頭部を押さえ付ける。どきどきどき。心拍数がどんどん上がっていく。彼の顔が少し傾く。キ、キス、される…!
「…ふぐっ」
 慌てて彼の顔を押し戻して椅子を回す。変な声がした気もするけど心拍数上昇のせいで耳元で脈打つ鼓動が邪魔して聞こえない。顔が熱い。汗まで出てきた。
「…目金…テメェ…!」
「ふ、不埒な…!不埒な事はしたくありません!」
「不埒ッてお前…もっと不埒な事もシてんだろ。セッ―「わああああ!言わないで下さい!」
 思わず耳を塞いだ。どうしてそこまで言うんですか!とわあわあ騒ぐ。恐らく今の自分は先程の彼の煩わしさなど比にならないほどの煩わしさだろう。それでもその先は恥ずかしくて聞けない。聞きたくない。
 いくら彼と自分が恋仲であって、ある程度の関係は進んでいると言っても、いざ今までの恥体を口に出されると恥ずかしいのだ。耳を塞いだまま首をいやいやと振っていると、後ろから抱きしめられて再び体が硬直した。彼の顔は見えない。力の抜けた腕が彼によって耳から外され、耳元で彼の楽しそうな笑い声。
「また俺の前で腸内洗浄してぇのか?」
 カッと頭が熱くなった。一気に通り過ぎた沸点は理性というものを根こそぎ破壊したらしい。この変態にはキツく言葉を教えなくては。怒鳴り散らそうと、彼の方へ向き直った時だった。一気に視界が暗くなり、唇を霞めたざらざらした生温い感覚。
「―な?」
 彼が舌を出したまま笑う。
 机の上では、強く握られた拳の中でノートの一ページがくしゃくしゃになったまま震えていた。
 しゅうううと音を立てて煮詰まっていた物が小さくなっていく。はあ、とため息を付くと、さあ癒してくれよと彼が目を細めて口の端を吊り上げた。


   
(ノートは助からなかったようだ)









しまが外部サイトで不動さんと目金くんの絵描いててビビビンと来てしまって。