「コーマくん」

僕が抱き着くとコーマくんは、何ですか、と睨んでくる。あぁ、厳しい。でも、僕は知っている。彼が睨んだり、冷たくしてくるのは、彼が僕に少しでも好意を持ってくれているから。そんなふうに素直じゃないところも可愛いらしい。

「コーマくんは、いつもニコニコしてるけど、僕のときだけ冷たくない?」
「気のせいです」

早くどいて下さい、と彼は僕の腕を掴んだ。まぁ、そんなことをされたところで、どくつもりなんて毛頭ない。むしろ、それを逆手に取ってやろうか、なーんて。そうでもしないと、素直じゃない彼は、永遠にデレてくれないだろう。

「どうしたの?手なんか重ねてくれちゃって…」
「だから、どいて下さいって…」
「んー?聞こえないなぁ。もうちょっと、近くで言ってくれないと…ね?」

僕は顔を彼の鼻先数ミリのところまで寄せて、にっこり笑ってみた。今まで、何人も女の子を陥落させてきた笑顔も、効果は……あったようだ。

「あの……」

さっきまでの強気な構えが崩れた。僕から離れようとする身体をぐいと引き寄せて、逃がさないようにする。

「んー?何、かなぁ?」
「近く…ないですか?」
「気のせいだよ」

そう言って、再びにっこり。彼に見せる笑顔は、今まで女の子たちに見せていたような安い笑みではない。彼女たちは、正直、簡単に陥落してくれる。だから、上辺だけでも関係ない。でも、彼には心からの笑顔でないと…振り向いてももらえない。

「コーマくんが、僕のことを少しはきにしてくれてるって、知ってるよ」
「そんな、ことは…」

僕は何か言おうとしていた彼の唇に、人差し指を当てた。

「無いとは言わせないよ?」
「…………ッ!!」

不敵に笑って見せれば、彼は口をつぐんだ。その瞬間、すかさず僕は彼にキスをする。

「…っ、何を……」
「君に、もっとちゃんと僕を見てもらおうと思って、ね」

ゆっくりと身体を離すと、服の裾を掴まれた。

「ちゃんと、見てますから…」

真っ赤な顔をして俯いて、とても小さな声で彼は言う。思わずときめいてしまった。

「逆に僕が攻略されちゃったかもね…」
「え?」

小さく呟いた僕に、コーマくんはコテンと首を傾げた。やっぱり、攻略しようと思っていた僕の方が攻略されてしまったかな…。

「何でもないよ」

さっきの笑顔に戻して僕は続けた。

「ツンツンしてるコーマくんも可愛くて好きだけど、やっぱり素直になってくれた方がずっと可愛くて好きだな」
「別に、可愛くなんか…」

ぎゅっと抱き寄せると、コーマくんはそれきり何も言わなくなってしまった。
ツンデレ攻略なんてできるわけがない。

ツンデレ攻略取説
(だって、僕の方が先に攻略されてしまったから)

******

素敵企画『ヒャクイチ!』様へ提出

マイナー過ぎてどうしようかと思いつつ、ものすごく楽しかったです!
素敵お題にそえているか心配ですが…

素敵企画に参加させていただき、ありがとうございました!!

広まれ!マイナー!!


2011.03.20
せっしょん!
ロイズ



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