「馬鹿馬鹿馬鹿。馬鹿コーマ」

半泣きになりながら、グランは力の入らない手でポカポカと俺を殴ってくる。地味に痛いのが嫌だ。

「何ですか、突然」
「馬鹿」

馬鹿の一つ覚えのように、ひたすら『馬鹿』と言うグランとちょっと屈んで目線を合わせる。まぁ、3pくらいの違いだから、そんなに差は無いのだけれど。

「言ってくれないと、謝るにも謝れませんよ。何ですか?」

小さい子に諭すように言うと、ふてくされて、ぷくっと頬を膨らませる。同い年なはずなのに、なんでこんなに年齢の差を感じるのだろう。

「…コーマ、俺のタルト食べたでしょ」
「あぁ、そんなことでしたか」

口の端を親指でぐっと拭う。その指を舐めるとほんのり甘い味がした。ふと目の前のグランを見ると、何故か頬を少しだけ赤らめている。何か…しましたか?

「エロい」

一言でバッサリ切られてしまった。特に意識はしていなかったのだが、どうやらそう見えたらしい。

「そんな一言で…というよりも、そういう目で見る貴方の方がアレなんじゃないですか?」
「馬鹿馬鹿。馬鹿コーマ」

察してよ、と加えられて、やっと気付いた。

「ヤりたいなら、早くそう言って下さいよ。もしくは、誘ってみるとか」
「アホじゃないの?」

その言葉と同時にゴッと頭突きをおでこにくらった。痛い、ヒリヒリする。おでこを押さえるとグランも同じことをしていた。貴方は、自業自得です。

「全く…素直じゃないんですね。悪いコには、お仕置きですよ?」

その場にグランを押し倒して、ニヤリと口角をあげて忠告する。今夜も、俺の歯止めは効かないだろうな…なんて。



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