「ねぇ、抱いてよ」

グランはそう言って挑発的に笑う。どう誘えば俺が落ちるかなんて、グランは完璧にわかっている。少しだけ瞳を潤ませて、その瞳で上目遣いに俺を見つめる。河川敷の捨て犬のようで、抱かないわけにはいかない。…これが、惚れた者の弱味というものか。

「優しくね?」

押し倒されているはずのグランは、さっきまでの挑発的な笑みを浮かべたまま、指で俺の黄色い横髪を弄っている。優しく、と言う癖に、最後には、もっともっと、と激しい快楽を求める。優しさなんてあったもんじゃない。

「それは矛盾ですよ」

俺が指摘してやれば、グランは意地悪く口角をつりあげた。

「でも、そんなこと言っても、コーマだって優しくしようなんて、最後には思わなくなるでしょ?」

何も言い返せなくなる。図星だった。うっと眉根を寄せると、その表情を楽しむかのようにグランは、くすくすと笑う。

「何ですか」
「コーマを困らせるのって、楽しいね」
「…なんて悪趣味な」
「それはお互い様だよ」

グランは、右足で馬乗りになった俺のジャージを捲り上げた。そして、捲り上げたことで露になった腹を足で撫で上げる。

「何、ですか」
「たまには、逆でもいいかな…なんてね」
「ずいぶんと強気な発言を…」
「まぁ、俺はコーマに抱かれるので十分…というよりも、その方が好きだから」―だから、今日も抱いて?

そう付け足して、左手を俺の首に回して引き寄せた。唇を重ねる寸前に、至近距離でも耳を澄まさないといけないくらいの声で、グランは確かにこう呟いた。

「ずっと離さないよ、コーマ」

それは、離せないの間違いではないですか?と言うのは、グランの唇に全部吸われてしまった。
今の俺には、依存症という言葉がぴったりだ…。そんなことはとうの昔から思っている。
一体、離せなくなっているのは、どちらの方だろうか。


ずっと離さない?違う、離せないんでしょ?

***********

黒グラン生息中。
逆転じゃないです。コーマさんには誰も勝てませんよ!

何だか、お題なのかそうじゃないのか…さーせん(泣)

素敵お題提供は『ひらひらと舞う』様。
私を狙ったらしい、このシリーズは終了です。
ごめんなさい。樹海いってきます。

ありがとうございましたぁ!

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