「晴矢?」 「何だ?」
アジア予選決勝戦直前の控室。俺がスパイクを履いていると、慎重な面持ちで風介が声をかけてきた。
「ヒロトと会うのを、どう思う?」 「どうって…」
突然、予想していなかったことを尋ねられて、返答に困る。どうと聞かれても、別に何とも思っていない…というのは、嘘になるけど、どう思うかなんて、自分にもよくわからない。
「ごめん。こんな質問…」
黙ったままでいる俺に、風介はすまなそうに言った。
「特に意味があるわけじゃないんだ。ただ、やっぱりヒロトがいいって言われたら、と思って…」
そんなことはない、とすぐに答えられたらよかったのに、また言葉に詰まる。それどころか、つぅっと涙が頬をなぞった。
「…晴矢?泣いてる?」 「え?」
驚いたのは、俺の方だった。何故泣くのか、何故涙が溢れるのかが、全くわからない。
「ごめん。晴矢」 「何、で…?」 「晴矢を悲しい気持ちにさせた。泣く、とはそういうことだろう?」
風介にギューっと抱き締められて、さらにボロボロと涙がこぼれる。ヒロトより、俺が望むのは、風介と一緒に居ること。ヒロトと風介と三人そろって幸せになろうと約束したけど、ヒロトは一人で今幸せになっている。だから、バラバラに幸せになってもいいじゃないか…。
「…俺はッ、風介と居られれば、幸せに…なれるから」
―だから、絶対に離さないで。
そう思ったものの、それは口には出さなかった。風介は俺が言った一言に縛られてしまうから。だから、あえて言わずに。そんな中でも、察してくれないかな、と願っている俺が居る。でも、さっきよりも力を込められた腕が後者を表している気がした…。
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風晴に恋して!←何が ヒロトは風介と晴矢の保護者だと思う。
何だか、スランプ。
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