しとしとと降り続く雨。いつになったら止むのだろうか…

今日は傘を忘れた…ついていない…一日中晴れるだろうという天気予報はハズレ。昼からずっと降り続いている。あいつなら、きっと入れてくれる。きっと…。
このまま帰ろう…何度かそう思った。でも、足が動かない。雨に濡れたくないから…それもあるが…



「あ、鬼道さん!」
「…佐久間か」

待っていた奴が来た。しかし、平常心を保ち、素っ気なく相手の名前を呼んだ。待っていた奴――佐久間は俺をジッと見つめたまま…

「どうしたんですか?帰らないんですか?」

やっと口を開くとその言葉。不思議そうな顔で俺を見つめながら返事を待っている。お前を待っていた…何て口が裂けても言えない。だから、もう一つの事実を述べる。

「あぁ…もう少し止むまで…」
「もしかして、傘を持ってないとかですか?」

でも、ちゃんと佐久間は見抜いていて。手ぶらで屋根の下に居るのだから隠してもすぐにバレてしまうのに。会話を少しでも長い時間楽しみたかった。でも、やっぱり本音は顔に出てしまう。

「う…」
「図星…ですね?一緒に帰りましょうよ」

やっぱり…と言わんばかりにニコッと笑うと佐久間はバサッと傘をさした。あぁ、やっぱりな…止むまで待つか、と思った矢先の“一緒に帰りましょう”。俺は驚いて、返って来る答えは分かっていながらも聞いてしまった。

「お前、2本傘を持っているのか?」
「いえ、もちろん1本です。ほら,こうやれば…ね?」

予想通りの答え。そう思ったと同時に腕をグッと引かれた。そして、そのまま腕を組まれる。

「あ、佐久間…」
「相合い傘。こうするんです」

抗議しようと思い、横を向くと佐久間が思ったよりも近くて少し嬉しくなる。たぶん、顔が赤い。うつ向きながら、思ったことを伝える。

「…近い」
「近くないと、どちらかが雨に濡れるんです…」

そう言いながら組んだ腕を少しだけ強くされる。このままだと顔が緩んでしまうと思い、傘を見上げるとさっきは気付かなかったが可愛い。

「そうか…というより、傘が」
「傘が…なんですか?」

本人はあまり意識していないのか、不思議そうな声で聞き返す。

「可愛い…」

呟くように答えると佐久間が隣でクスッと笑った。それが、俺の言い方が面白かったのか、それとも、青いペンギン柄の傘を思い出したのかは分からない。


「あはは。ペンギン、可愛いでしょ?」
「うん。お前っぽい…」
「ありがとうございます。そういえば、実は鬼道さん、誰かを待っていたとかですか?」
「え?」

佐久間は丁寧に軽く会釈をすると、思い出したように自分でも忘れていた核心をつかれる。さすがに気付いていないと思っていたから凄く驚いた。

「いや、あくまで俺の憶測ですが。誰かを探していたようだったので…」

気のせいですよね、たぶん。と言いながらも答えを待っている。分かっている癖に…

「よく…見ているんだな」
「誰を待ってたんですか?」

なるべく本心が出ないように声のトーンを下げて言うと、佐久間が目をキラキラと輝かせながら素早く俺を向く。

「……秘密だ」

佐久間の目のキラキラ加減が面白くて少しだけいじってみる。すると、キラキラ度が増し、傘を持ったままガバッと抱き付いてきた。

「このまま鬼道さんから離れませんよ」
「離れろ。………お前を…佐久間を待ってたんだ…こうして、入れてくれると思ったから」

回りの視線が気になり、表面上だけは拒否するが、本音を言うと、もう少しくっついていてほしかった。離した瞬間、本当に一瞬だけ寂しげな表情になった。それが切なくて、本当のことを伝えた。

「…なんなら、別の方もいれてもいいですよ」
「…は?」

ふふふと笑って佐久間は突然とんでもないことを言い出した。しかし、佐久間は全然気にしていないかのように俺の腕を引いて歩き始めた。

「さぁ、帰りましょう!…あ、晴れてる」「虹だ…」

さっと傘をおろすと、眼前には綺麗な虹が…ふっと笑みがこぼれる。

「本当だ…綺麗ですね」
「雨,もう少し降っていても良かった…」

感動に浸っている間に、雨に少し文句を言う。もう少しくっつけさせてくれてもいいのに…

「え?何ですか?」
「何でもない。置いて行くぞ、佐久間」
「あ、はいっ!」

ピチャピチャ音をさせながら着いてくる佐久間。これからも、一緒に…。


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駄目駄目でごめんなさい…
鬼道さんツンデレです、きっと。
なんだかんだ言って佐久間のこと、大好きだと思います。
私も佐久間好きです。



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