ヒロトが俺の膝の上に座って、にこにこといろんな話をする。
「でね…って、聞いてる?」 「はい。聞いてます」
一応は。それは付け加えない。またヒロトの話を聞けば、最初からずっと同じ話。
「円堂くんがね、」
にっこり笑って話す内容は彼の話ばかり。俺はもううんざりしていた。俺とヒロトは、恋人、というくすぐったい表現も出来てしまう仲だ。それなのに、俺の前で違う人物の名前を出すとは、ヒロトもいい度胸だと思う。
「、円堂くんってね…」 「もう、やめませんか?」 「へ?…っむ」
きょとんとしたヒロトの襟を掴んで引き寄せて、口付ける。いつもよりも乱暴に口腔をまさぐってから、ゆっくりとヒロトを離した。
「きょう、ま…」 「何で俺と居るのに、他の人の名前を出すんですか。しかも、楽しそうに話して…。少しは俺のことも考え……ん!?」
考えてください、と言おうとしたら、今度はヒロトに口を塞がれる。さっきの俺と同じことを、ヒロトは俺にした。俺と違ったところは、離したときに顔が真っ赤だったこと。
「俺は、いつも恭馬のこと考えてる」 「今は?」 「考えてた」 「嘘ばっかり」 「考えてたって」 「本当ですか?」 「うん。…いつになったら恭馬が妬いてくれるかなぁ、って」
どんどん小声になるヒロトを、今度は優しく抱き寄せた。
「最初からでした」
俺はため息をつく。
「俺はヒロトに触れるこの世の全てに嫉妬してますから。もちろん、俺を除いて」 「…馬鹿」 「じゃあ、俺の話をしましょうよ」 「やだ」
俺の提案は即刻拒否されてしまった。むっとして、ヒロトの唇に触れると、甘噛みされる。
「った…何でですか」 「恭馬の話してもつまんないから」 「…………ヒロト、」 「だって、そうじゃん。恭馬は俺を愛してくれてて、いつも俺のことを考えていて、ずっと俺を見ている。そんだけだもん」
俺はヒロトの言葉を聞いて、ぼーっとしてしまった。あぁ、今回ばかりは負けたな…。
「ヒロトに一敗ですね」 「やったぁ!!じゃあ、勝ったから…」 「罰ゲームですか?」 「恭馬のいろーんな話、しよ?」 「…仕方ない、ですね」
俺は笑って、ヒロトの額にこつんと額を当てる。ぎゅうっと抱き締めるとヒロトは、ごめんね、と小さく呟いた。
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ふと浮かんだネタ
自分で書いておきながら、 二人が羨ましくてしかたない
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