俺は天体望遠鏡を覗き込んだ。 天気良好。空は一面水色に染まっている。望遠鏡を覗いても、水色しか見えない。本来、星を見るためにあるそれは、昼間に使っても意味がなかった。
「あー、つまんない」
そう呟いて、望遠鏡から離れた。何か面白いことがどこかに落ちてないのか、と少しの期待を込めて部屋を見回す。そして、意外にも面白いことは、すぐに見つかった。
「何コレ」
机の上にある、真っ白い封筒。雑然とした机の上で、それは妙に浮いていた。 中を開くと、封筒と同じように真っ白い紙が二枚。それから、もう一枚。今度は桃色の紙が入っている。その紙を見ると、黒いインクでたった五文字だけ記されていた。
「あいしてる」
その文字を音読してみる。そして、一人で大爆笑。 こんなもの、いつ書いたんだっけ。 ―あぁ、ジェネシス計画が始まった頃か。 あれ、誰に宛てて書いたんだっけ。 ―あぁ、“彼”に宛てたんだ。 俺はその紙を再び封筒に戻した。
「なんで、こんなものをとっておいてしまうんだろうね」
一人で苦笑を漏らす。 馬鹿みたいだ。 ―あぁ、知ってるよ。 ロマンチストだなぁ。 ―あぁ、それも知ってる。
俺はしばらく封筒を見つめて、それから、ビリっと勢いよく、それを二つに裂いた。その残骸は、まるで似て非なる俺と彼のようだった。
「今日も、快晴」
俺はにっこり笑う。
「面白いことみぃつけた」
一面の青を見て、俺は呟いた。
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久しぶりー 私が暇じゃないけど暇なのよ ヒロトに天体望遠鏡はつきものだと思う
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