美しい三拍子に合わせてステップを踏む。毎日毎日踏んでいたら、何だか飽きてきた。今日は舞踏会だというのに、気分が乗ってこない。このまま部屋に帰って寝てしまおうか、なんて考えていた時だった。

「素敵なドレスですね。貴方の鮮やかな緋の髪によく似合ってます」
「ありがとう、ございます」

ジャケットから帽子まで、全身を黒一色に揃えた人が、窓に寄り掛かっていた。一応お礼を言ってその場をやり過ごそうと思ったが、そういうわけにもいかなさそうだ。

「ずいぶんと飽きていそうですね」
「そんなこと、ありません」
「ふふ、顔に出てますよ」

そう言われて、つい顔に手をやってしまう。そうしたら、彼は嘘です、と言って笑った。

「何ですか…?」
「俺はただの騎士です」
「はぁ、」
「今日は、貴方に一夜限りの魔法をかけに参りました」

彼は帽子を少し上げて、茶目っ気たっぷりに片目を瞑る。自分が半分不審者な気もしたが、少し見えた金色の瞳に魅せられてしまった。

「一夜限りなら、魔法をかけられても」

相手にだけ聞こえるように小さく小さく呟いた。その時、一夜が永遠に続くような気がした。


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やっぱ、騎士と姫はツボだと思う今日この頃
うーあー

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