相手を見つめて、1・2・3…。今日まで練習してきたステップを舞踏会場の隅でおさらいする。1・2・3…とぼそぼそ呟きながら、ステップを踏んでいると、近くからくすくすと笑う声が聞こえた。ムッとしてそちらを見ると、全身黒に身を包んだ人が立っていた。
「何でしょうか?」 「いや、貴方があまりにも可愛らしかったので」
またくすっと笑ったその人の瞳は、今夜の三日月や狐の目のように細められている。彼は笑いをおさめて、深呼吸してからその場に跪いた。
「踊っていただけませんか?」 「…喜んで」
にこりと微笑んだ彼がかっこよくて、咄嗟に自分の手を重ねてしまった。照れ臭くなって目を反らしたら、ひょいっとお姫様抱っこをされてしまっていた。
「何…を?」 「今宵は月が綺麗ですね」 「え?まぁ…」
確かに今日は綺麗な三日月だ。唐突な彼の呟きに、下ろせ、というのも忘れてしまう。月に気を取られている間に、彼はそのままテラスに出た。
「ここで一曲いかがですか?ヒロト様」
その場に下ろされて、お辞儀をされる。差し出された手に再び手を重ねた。そして、1・2・3…練習してきたステップを踏む。
「今宵の舞踏会へようこそ」
彼は微笑んで言う。その笑みは月光に妖しく映った。
今宵の舞踏会へようこそ ******
お題ー またあなたは…
よし。やるべ!!
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