「風丸くんっ」

俺が宿舎の洗面所で髪を乾かしていたら、鮮やかな赤が鏡に映った。俺はドライヤーを止めて振り返った。

「お前も乾かしに来たのか?ヒロト」
「うん」

俺の質問にヒロトは頷いた。しかし、その後言葉は続かずに、俺とドライヤーの間をヒロトの瞳が行ったり来たりしている。何かと思って首を傾げると、ヒロトは言いずらそうに口を開いた。

「あの…その……風丸くんの髪の毛、俺が乾かしても、いい…かな…?」

うつ向き加減で言ったヒロトが反則並に可愛くて、思わず手が伸びそうになる。それを抑えて、俺はヒロトにドライヤーを差し出した。

「頼む。助かるよ、ありがとう」
「こちらこそ!」

何が、こちらこそ、なのかは、いまいちよく分からないが、ヒロトの嬉しそうな顔を見られただけで十分だった。ドライヤーを受け取ったヒロトは、慣れた手つきで俺の髪を乾かしていく。

「風丸くんの髪の毛、さらさらしてて乾かしやすい」
「そうかなぁ?」
「うん。玲名ちゃんの髪の毛みたい」

突然出てきた女の子の名前に、俺は少々驚いた。ヒロトが女の子の名前を出したことなど、今まで一度もなかった。しかし、ヒロトの周りに女の子が全く居なかったとも思えない。一人でしかめっ面をして考え込んでいると、後ろからくすりと笑う声が聞こえた。

「ごめんごめん」
「え?」
「そうだよね。玲名ちゃん、って言っても分かんないよね。ウルビダ、って言えば分かるかな?」
「あー…分かる」

へぇと頷けば、ヒロトはにっこり笑った。

「一度、ガイアのみんなも、ここに呼びたいな」
「ガイア?」
「みんなが知ってる、ジェネシスのこと。ジェネシス計画の前は、俺のチームはガイアだったんだ」
「そうなのか」

俺はヒロトについて知らないことが多いな…なんて寂しくなった。そんな沈み気味の俺の後ろでは、ヒロトが笑顔で髪の毛を乾かしてくれている。

「風丸くん」
「ん?」
「今度は髪の毛、縛らせてね」
「あぁ、いいぞ」
「本当!?嬉しいな…そうだ、何かお礼しなくちゃね」

一瞬断ろうと思ったが、またとないチャンスだ。俺は、じゃあさ、とヒロトに言った。

「ヒロトのこと、いろいろ教えてくれないか?」
「俺の…こと?」
「あぁ」
「もちろん、いいよ」

さぁ、乾いた、とヒロトはドライヤーのスイッチを切った。最後にヒロトは、ありがとう、とお礼を言って洗面所を出ていってしまった。お礼を言わなきゃならないのは、本当は俺の方なのに…。今度また、こういうことがあったら、ヒロトのことを全部聞いてやろう。俺は髪を結わきながら、小さく宣言した。


******
アンケより

風丸さんの口調がわかりません
何かスランプで泣きそう

ジェネシスは髪形が特殊な子が多いけど、みんなヒロトが乾かしてたら可愛いな…なんて

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