『はい。もしもし』
電話越しの久しぶりの声。
「もしもし、きょーま?」 『俺以外に誰が出るんですか』
はぁ、とため息混じりの声で恭馬は言う。呆れたような表情が目に浮かんだ。
『で、何を悩んでるんですか?』 「あ、やっぱり、わかる?」 『貴方のことで、俺にわからないことがあると思いますか』
恭馬は優しい声で言った。どんなに離れていても変わらない気持ち。出来ることなら、今すぐにでも恭馬に会って、抱き締めてほしい。
『もう少し、距離が近ければ、すぐにでも飛んで行って差し上げたいのですが…さすがの俺にも、無理そうです』 「うん。分かってる。恭馬の声が聞きたかっただけだから」
そんなことを言って強がっても、心は恭馬を求めている。恭馬に会いたい、と今にも泣きそうだった。でも、ただでさえ心配をかけてるのに、これ以上心配をかけるわけにはいかない。ぐっと涙を堪える。
『あんまり、無理はしないで下さい』 「うん」 『全試合、みんなで応援してますよ』 「ありがとう」 『また…電話下さいね。……愛してます、ヒロト』 「俺も…大好き、恭馬」
手を伸ばしても、掴むのは空だけ。 耳元では、恭馬の声ではなく、無機質な音が鳴るだけだった。 頬を何か温かいものがつたって落ちた。
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うおお!甘くなかった! 切なめです。
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