「きょーまっ」
呼ばれて振り返ったら、満面の笑みのヒロトが仁王立ちしていた。
「なん、ですか?」
「はい、プレゼント」
「ありが……ひぃあああっ?!」
ほいっ、と手に乗せられたものに、俺はガクガクと震える。緑でヌメヌメしてて、ゲロゲロ鳴く、アレ。
「あはっ、おもちゃだよー?」
俺の手に乗ったままのアレ(カエル)のおもちゃをひょいと掴むと、俺の鼻先に突き付ける。本物だったら俺も触れないよ、と笑うヒロトは、また誰かにやるつもりなのだろうか、それをポケットに収めた。
「もうっ、やめて下さいよ…俺が苦手なの知っているでしょう?」
「そうだよね…恭馬は虫も苦手だし、ホラー系も絶叫系も駄目だったよね」
ニヤニヤしながらヒロトに言われて、何となくショックだった。
「恭馬の弱み、少しでも握ってなきゃ、俺はたぶん恭馬と一緒にいられないよ」
一人で言って、一人で納得しているヒロトの額を小突く。
「じゃあ、一緒に居るために、たくさん握ってもらわないとなりませんね」
「じゃあ、ぜぇーんぶ教えてよ」
「もちろんです」
微笑むヒロトを抱き寄せる。俺の最大の弱みは…ヒロトだと思う。