コンコンと二回、扉をノックする音が部屋に響いた。

「入りますよ、グラン」

優しく穏やかな声が聞こえる。部屋のベッドでゴロゴロしていた俺は、座り直してから、心地よい低音の声の主を迎えた。

「また来たの?コーマ」
「えぇ。貴方に会いに」

隣に座って、ギュッと抱き締めてくれる、その腕の暖かさに身を任せながら、ねぇ、と呟いた。

「もし…もしも、だよ?俺がコーマじゃなくて、別の人が好きだったら?」
「貴方は急に何を言い出すのですか…俺だって、あまり気は長くありませんからね」

抱き締めてくれていた腕が少し緩まって、切ない声音で言われてしまうと、何だか急に寂しくなってくる。

「ごめん。嘘、だから」
「わかってますよ。だから、泣かないで下さい」

コーマにそう言われて、驚きながらも自分の頬に手を触れると、少しだけ濡れていた。上を向いて困ったような笑顔のコーマと目が合った瞬間に何故かポロポロと涙が溢れてくる。

「ごめんね。どしちゃったんだろ…」
「全く、貴方は何故俺を困らせるのですか」
「へっ!?ちょっ…コーマ?」

ガバッと座っていたベッドに押し倒されて、一瞬で全ての思考がフリーズする。

「煽らないで下さい」
「んっ……ぅふ」

グイッと引き寄せられて、唇を奪われる。何度も角度を変えて、舌を絡められる。

もう、どうにでもして。
このまま、身体も心も溶かして。

コーマがくれる、優しい快楽に酔いしれながら、切実にそう願った。

涙が出るくらい、
(好きだよ、コーマ)
(知ってます)
(さっきはごめん)
(…お仕置きですね)
(えぇっ…!?)



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