「さーむーいー」
ぎゅう、と抱きついてきたヒロトは、ぶすっとしながら言った。最近は冷え込む日が多い。冷え症のヒロトには辛いのだろう。
「何か、温かいものでも飲みますか?」
「…紅茶飲みたい」
「わかりました。では、淹れてくるので…」
離れていただけますか?と言おうとしたら、もっとぎゅっとくっつかれてしまう。俺だって、本当は離れてほしくない。だけれど、もし万が一、紅茶を淹れているときに、手が滑ってお湯がヒロトにかかってしまったりしたら、死んでも死にきれない。だから、離れてもらいたいのに…
「ねぇ、恭馬」
「はい?」
「やっぱり、紅茶は後ででいい」
「そう、ですか…?」
「うん。それで、寒いからぎゅうってして?」
返事をする前に、ヒロトをぎゅっと、ぎゅーっと抱き締める。くっついたヒロトからは、穏やかな温もりが伝わってきた。