某カロイドの曲パロです
その曲を知らなくても
全然問題ないです
でも、苦手な方はご注意下さい







「初めまして。基山ヒロトくん」

夢の中でそう言って、笑った顔が忘れられなかった。自分とそっくりな顔と声。でも、自分のよりもしっかりした赤の髪色だけは少し違っていた。
その正体はわかっている。何年も前に亡くなった、俺の義兄(にい)さん、吉良ヒロト。でも、何で俺の夢に現れたのかはわからない。…少しだけ、いや、かなり会いたいと思っていたりする。

「ふぅん。そんなに僕に会いたいと思ってくれてるんだ。嬉しいよ」

振り返れば自分が鏡に映ったようではあるが、確実に別人が鼻先数ミリのところにいる。緋でなく、赤が何よりの証拠だ。真っ黒な闇の世界に二つの“あか”が浮き上がる。

「兄、さん…」

そう呼んだら、兄さんはあの夢の笑顔で笑った。

「兄さん、か。いい響きだね」

兄さんは一人で呟いてみて、嬉しそうに微笑む。いつの間にか、俺との間合いを数メートルに広げていた。いつ俺から離れる時間があったのだろう。何故、と考えていたら。兄さんが俺に向かって何かを投げてきた。

「……ッッ?!」

俺は“何か”を避けきれずに、それは頬をなぞって、赤い線を残した。

「僕と同じ色」

兄さんはまた俺のすぐ傍に戻ってきていた。そして、俺の頬の傷口から漏れている液を恍惚とした表情で見つめる。

「僕の愛だよ。分かるかい?ヒロト」

ヒリとした感触に思わず目を瞑る。兄さんが傷口に触れている。おそるおそる目を開くと、兄さんは俺の赤い液が付いた指を舐めた。俺はその光景にゾッとして、一歩後退る。

「君がどう思っていようと、僕は君が好きだ」

突然の告白と一方的な押し付けの愛…驚くよりも先に笑えてきた。自分は兄さんをどう思っているかはわからない。もしかしたら、好きかもしれない。正直なところ、俺は兄さんのことを全然知らない。それでも、好き…とか、可笑しすぎる。

「僕は君を愛せるよ。どこかに鎖で繋いで、僕しか触れられないようにしてさ」

ははは、と乾いた笑い声を上げて、俺の髪に触れた。

「運命なんだよ、これも。ヒロトも僕のこと、いつの間にか好きになってるよ。まぁ、気付いたときには、きっと俺は君に飽きてるだろうけど」

黙ったままの俺の頭をぐしゃりと撫でる。兄さんの手に一瞬だけ暖かさを感じた。…本当に一瞬だったが。

「でも、一度でも重なっちゃったら、もう愛なのか欲なのか、わからなくなっても、お互いに引きずって依存し合うんだろうね」

中学生に向けて言うにはあまりよろしくないことを言った。
依存…か。そっくりな容姿で、同じ名前。同じ人に、同じ希望を託された俺と兄さんは離れたくても離れられない。腐れ縁という奴だ。兄さんがさっき言ったのは、それと似ていると思う。だけど…

「ねぇ、兄さん」
「何?ヒロト」
「俺を愛しているって言うの?兄さんの存在意義のために、兄さんが俺にしがみついて、したいこともできず、勝手に一人で空をもがいていることを、愛しているって?」
「ヒロトは、僕が嫌いかい?」

俺の質問には答えず、兄さんは新たな質問を俺に突き出した。言葉に詰まっていたら、兄さんはさっき俺に投げた“何か”―ナイフを出して、自分の首筋に切っ先を当てる。

「兄さんっ…何、して…」
「殺したっていいじゃないか。どうせ完全に消えるだけだ。誰の心にも残らない。消えてしまうんだから、誰も悲しみはしないさ」

気付いたときには、俺は兄さんからナイフをひったくって、抱き着いていた。抱き着いてから、ナイフは遠くに投げた。

「俺は兄さんを愛せる。どこかに鎖で繋いで、俺しか触れられないようにして」
「ヒロ、ト?」
「これも…運命、なんでしょ?」

兄さんの言葉をほとんどそのまま引用した。風に触れた頬の傷が少し痛かったけど、もうどうでもよかった。

「ありがとう、ヒロト」

微笑んだ兄さんは、俺の腕の中で泡になって消えてしまった。

「兄さんっっ!」

叫んで手を伸ばすと、目の前には見慣れた天井しか無かった。夢か…と頬に手をやれば、あの傷が残っていた。

「兄さんの、存在意義…」

呟いてから、それを確かめるように傷を撫でた。


モ/ザ/イ/ク/ロ/ー/ル
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吉良兄さん成仏出来た(笑)
っていうか、たぶん楽しいのは私だけ
自己満すいません

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