「あぁっつぅーーっ!!」
コーヒーを飲んでいたら、ガタンとカップを置く音と、ヒロトが叫ぶ声が聞こえた。何事かとヒロトを振り返ると、舌をべーっと出していた。
「どうしたんですか」 「やけど…したぁ」 「全く…貴方は猫舌なんですから、もっとゆっくり飲めばいいんじゃないんですか?」 「今すぐ飲みたかったの」 「そんなに、何を飲みたかったんですか」 「ホットミルク」
だいたいいつもなら“紅茶”という返事が返ってくるはずだ。予想外の返答に、は、と瞳が開いてしまう。
「何でまた、ホットミルクなんて…」 「だって、昨日恭馬が美味しそうに飲んでたから。あー、ヒリヒリする」
なんだか理由がすごく可愛らしい。痛い、と呟いてもう一度べっと舌を出したヒロトの唇に噛みつくようにキスをした。
「…ふぅ、は……」
いつもよりも温度が高い口腔を舌で探りまわして、いつもよりも多めに舌を絡ませる。ホットミルクの味とヒロトの味をしっかり堪能してから、ゆっくりと唇を離した。
「ぅぁ…何か、悪化した気が…」 「舐めときゃ治るって、よく言うじゃないですか」 「え…まぁ、いうけど……」
ぼーっとしているヒロトを撫でて、飲みかけのコーヒーをすすった。ちょっと熱かったけれど、俺は全く猫舌というものには縁がないので、そのままもう一口飲む。
「そんなに変化ないよ?」 「もう一回したら、何か変わるかもしれませんよ?」 「じゃあ、してみる?」
ふっと幸せそうに笑うヒロトにもう一度キスをする。二度目のキスは、ミルクとコーヒーの混ざった味がした。
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