「あのさぁ、」
いつものようにヒロトの左斜め後ろを歩いていると、ヒロトはムスッとしながら言った。前を向いて歩き続けたままのヒロトに、何ですか、と尋ねれば、ヒロトは大きく溜め息をついた。
「なんで恭馬は俺の隣を歩かないの?」
「え、と…癖ですかね」
「その癖、治してよ」
「騎士道に違反します」
真面目に俺が言ったら、前からクスリと笑いが漏れた。
「いいんですよ。俺は貴方を後ろから見ているだけで」
「やっぱり、恭馬には敵わないな」
「いいえ、それは俺のセリフです」
「手、繋ご?」
楽しそうに笑い続けるヒロトの左手を、自分の右手で繋ぎ取る。そうしたら、少しだけ強く引かれて、ヒロトの隣に並んだ。
「これなら、隣に居られるでしょ?」
嬉しそうに微笑んでくるヒロトを、とりあえず抱き締めてみた。
「そうですね」
やっぱり、貴方の後ろ姿だけでは物足りないかもしれません。