たたたー、とあるフレーズを歌ってみた。

「その曲、俺も知ってる」

そう言って、隣に居た円堂くんが歌い出した。その歌詞は切なくて、でも強い気持ちの籠った歌詞で、何だか泣きそうになった。

「ヒロト?」

歌い終わった円堂くんは、心配そうに俺の顔を覗き込んだ。

「大丈夫か?」
「うん、大丈夫。円堂くん、歌、上手いんだね」
「そうか?ありがとなっ」

にっこり笑った円堂くんは、また別の歌を鼻歌で歌い出した。今度は俺の知らない曲だった。その曲は?と聞くと、丁寧に畳まれた白い紙を渡される。

「歌詞が良かったから、書いてたんだけど…なんだかヒロトっぽい感じがしたんだ」

白い紙を開くと、円堂くんには失礼かもしれないけど、意外と綺麗な文字で歌詞が書かれていた。円堂くんのおじいさんがあんな感じだから、てっきり円堂くんもだと思っていた。

「いい歌詞だろ?」

そう聞かれて、こくんと頷いた。

「好きだな、この曲」
「そうか、よかった」

誰かに音楽を教えてもらうなんて、今まで一度もなかった。そんな暇さえなかった、というのもあるけれど、音楽は一人で聞くものだと思っていた。円堂くんと一緒にいると、初めてのことがたくさんある。

「ありがと、円堂くん」
「あぁ。今度CDとか貸すよ」
「うん、楽しみにしてる」

もしかしたら、今初めて中学生らしいことをしているかもしれない。

「その歌詞、ヒロトにあげるよ」
「ありがとう」

にこりと笑って、円堂くんはポスっと俺の頭に手を置いた。
この歌詞も、この曲も、永遠に忘れられない。


永遠に忘れられない

******

企画『風に響け』様に提出

すいません
素敵お題が苦しい…
曲のご想像はご自由に…

それでは、素敵企画に参加させていただき、ありがとうございました!!

10.09.12
せっしょん!
ロイズ

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