合宿所での夜中、コンコン、と控え目にドアがノックされた。はい、と返事をすると、ドアがギギィと音をたてて開く。
「え、円堂くん…」 「おう、ヒロトか」
俺の部屋にひょこんと顔を覗かせたのは、枕を抱えたヒロトだった。なんだか落ち着かない様子で目が泳いでいる。廊下は暑いし、立ち話も何だから、と俺はヒロトを部屋の中に招き入れた。
「まぁ、座れよ」
ベッドに座った俺は、自分の隣をポンポンと叩いた。そわそわしながら座ったヒロトは、じっと下を向いたまま、ギュッと自前の枕を抱き締めている。
「どうしたんだ?ヒロト」 「あの、さ…えっと……一緒に、寝てもらってもいい、かな?」
視線を泳がせたままヒロトは言った。そんな頼み事をしてくるヒロトが、ちょっと可愛いと思いながら、何だ、と返事をする。
「それくらいなら、全っ然いいぞ」 「ほんとっ!?」
ありがとう、とやっとヒロトは視線を合わせてくれた。本当に安心したような表情で、俺は少し笑いそうになってしまう。ヒロトは自分で持っていた枕を俺の枕の隣に置いた。そうか…一つの布団で寝るのか。
「大丈夫かな…」 「ごめんね。狭くなっちゃうよね」
俺の呟きを悪い方にとったらしく、ヒロトは眉毛をへにょんとハの字に曲げた。
「いやいや、全然大丈夫。そういうことじゃないから」
そうじゃなくて、俺の気持ち的問題。だって、大好きな人が隣に寝てて、手を出したくならない奴がどこに居る。そんな俺の気持ちは知らないだろうヒロトは布団に潜り込んだ。
「実は、さっき士郎くんとホラー映画見ちゃって、それで…ごめんね」 「大丈夫さ」 「ありがと、円堂くん」
ヒロトは何度目かの、ありがとうとごめんね、を言ってから目を瞑って、おやすみなさい、と言った。至近距離から見たヒロトの睫毛は長くて、そこらへんの女子なんかよりも、ずっと可愛い。じっと見つめていたら、いつの間にかスゥスゥと寝息をたてていた。可愛いな、なんて頭を撫でてみると、綺麗な緋い髪の毛はさらさらしている。すぐに手から落ちてしまって、落ち着かない。何だかヒロトみたいだな、と一人で小さく笑った。 その後もドキドキしてすぐには眠れず、ヒロトの寝顔を見ていて、気がついたら朝だった。俺が目覚めたら、ヒロトはもう起きていて、楽しそうに笑っていた。
「おはよ、円堂くん」 「お、おはよう」
何故だかすごく照れ臭かった。
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ホラー全然大丈夫なヒロトもいいけど 駄目なヒロトも可愛い
ひたすらヒロトにデレデレな円堂くんでした
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