俺と奴が出会うことは、きっと天に定められていたんだと思う。おひさま園でも気付けばずっと一緒に居たし、試合もよくパスを出し合うこともある。
「コーマっ」
俺が名前を呼べば、奴は俺に反応して動いてくれる。よいパートナー…そんなところだろうか。 こうなることは、昔から…きっと、生まれる前から、決められていたことだと思っている。今も、これからも、ずっと一緒に居られるものだと思っていた、それなのに。
「今日でお別れです、アーク」
コーマは突然そんなことを言った。それも、いつもの笑顔を浮かべながら。お前は寂しくないのか、と聞けば、コーマは困ったように笑って、さぁ、と一言だけ答えた。
「仕方のないことですからね」
天に定められていたのなら、仕方のないことかも知れない。でも、その別れはあまりにも唐突過ぎて…嗚呼、もう考えていることさえ馬鹿馬鹿しく感じられてきた。
「何処に行くんだ?」 「グランの居るところへ」 「やっぱりお前は、何処までいってもグランなのか」 「仕方のないことですからね」
再びそう言って、寂しそうに笑った。 “好きです”と言われたときは、舞い上がるほど嬉しくて。顔を真っ赤にして俯いたコーマを思わず、抱き締めたんだった。変なことを思い出して笑ってしまう。今もあのときみたいに抱き締めれば、コーマは思い留まってくれるだろうか?
「抱き締めればいいじゃないですか」 「なん、で…」 「アークの手を見ていればわかります」
何年の付き合いだと思ってるんですか、と付け加えたコーマに触れようとすると、その手を払い退けられる。
「触らないで…行けなく、なります」
でも、俺はコーマの言葉を無視して抱き締めた。コーマの身体は小さく震えていた。
「どうしても、行くのか?」 「えぇ」 「予定の変更は?」 「ありえません」 「…そうか」
さっきよりもギュッと抱き締める。コーマの温もりが伝わってきて、心地よい。
「好きでした、アーク」 「過去形か」 「そうです」 「俺は、好きだ。この先も」 「会わなくても?」 「もちろん」
じゃあ、と呟いて、コーマは俺の腕を振りほどいた。もう、コーマを抱き締めることは出来ないだろう。
「さよなら、アーク」
コーマの瞳が伏せられる。別れることは、天に定められていないことなのだ、やっぱり。定められていることなら…こんなに突然は来ない。
「またな、コーマ」
まだ、愛しい人との別れを受け入れられない俺は、そう言うことしか出来なかった。 出会うことは、定められていたこと。 別れることは、定められていなかったこと。
突然、何で。
コーマが去った後の地面に、俺は膝をついた。
出会いは必然、別れは突然
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なんか違う気がする。 だけど、なんか満足。
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