「コーマ、」

そう呼ばれて全てが始まり、

「恭馬、」

そう呼ばれて全てが終わる。
やっぱり、俺の全ては”ヒロト”で回っている。彼が黒、と言えば、白いものも黒くなる。

「ねぇ、コーマ?」
「練習中以外はその名前で呼ばないで下さい」
「ごめんごめん。…恭馬?」
「はい、何ですか?」

ムッとして拒否してから、笑顔でヒロトに返事をする。ぎゅうと腕に絡み付いてくる腕は白すぎる。

「恭馬って、いいよね」
「何がですか」

そう聞くと、ヒロトは嬉しそうに笑った。何が面白いのだか、俺にはさっぱりわからない。

「駒沢恭馬。うん、素敵な名前だよ」

うふふっと笑ったヒロトはもう一度俺に飛びついた。突然のことに驚きすぎた俺は、もうされるがままになっている。

「基山ヒロト。貴方だって素敵な名前じゃないですか」

笑っていうと、ヒロトは意味ありげに目を伏せる。嗚呼、何て綺麗なのだろうか、としばし見とれてしまった。…その、美しい悲劇のヒロインは、ぱっと明るい”笑み”の仮面をかぶった。

「恭馬のが、俺は好きだな。”コーマ”よりも、ね?…さぁ、始めようか、”コーマ”」

さっきまで恭馬恭馬と呼んでくれていたのに、悲劇のヒロインは一瞬で黒の女王と成り果ててしまった。颯爽と立ち去ろうとする”グラン”の腕を引いて抱きすくめる。

「いつになったら、貴方が俺を”コーマ”と呼ばない日がくるのですか?」
「きょう…ま…」

俺は黙ってしまったヒロトをもっと強く抱きしめた。

―恭馬、と呼んで下さい、ヒロト



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