ドーンと空に大きな花を咲かせる夏の風物詩、花火。それを二人だけの秘密の場所、廃墟の屋上から、二人きりで眺める。綺麗だね、と笑うヒロトの方が綺麗で、手すりに置かれたヒロトの手に自分の手を重ねた。
「恭馬…」 「見ていないと、終わってしまいますよ?」
俺の名前を呼んで、ハッとこちらを見たヒロトに笑顔で教えると、彼は照れたように笑ってもう一度花火に視線を戻した。空にはその花火大会の終わりを告げる、大きめのスターマインが。
「終わっちゃうね」 「帰ったら、線香花火がありますけど…」 「やるやる!!」
大きな花火に照らされたヒロトの横顔は、どんなに美しいと言われる花火でもこのヒロトには敵わないだろう、と思うほど美しい。花火を見つめながら無邪気に笑うヒロトの頬に軽く口付ける。
「もう、恭馬…」 「あ、あれが最後くらいじゃないですか?」 「え?もう!?」
寂しそうにも嬉しそうにも見える笑みを浮かべて、ヒロトは手すりから身を乗り出した。最後であろう花火が大きく上がって、ドンとお腹に響く音をたてる。
「さーあ、次はしっとり線香花火!」 「ヒロト、」 「なに……ん!?」
イェイと今までの雰囲気を壊すようにガッツポーズをしたヒロトの細い腰を抱き寄せてキスをする。 花火よりも美しいヒロトは、花火のように消えていってしまいそうだった。
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