Afterword.


こんなところにまで目を通していただいてありがとうございます。
おかげさまで、後日譚完結と相成りました。嬉しいやら寂しいやらで混乱しています。
もうこの二人がごたごたすることもないのだと思うとどうしようもない寂寞を感じますが、どうせ私のことなのでパロディとかまたどうせ書くんだろうなと思ってもおります。予定もしております。途中まで書いてそのままのパロディもたくさんあるので(FBIパロのことですね)、これで零式の話を書かないということにはなりませんから、寂しがるのはそれら全てが終わってからでも遅くないのかもしれません。13の連載書き終えた後も寂しかったですが案外けろりとしている今を思えば、恐れることではないのかもしれません。
いやでもこれでサイトの抱える長期連載が完全に終わってしまって私はこれからどうすれば。悩む気持ちが拭えない。

とにかく、気持ちを切り替えて、後日譚についてお話させていただきたいと思います。
例によってメタ発言やら上から発言やら夢主の話やら、嫌いな人にはとても嫌な話になりそうな気がいたしますので、そういうの好きじゃないよって方はここでページを閉じていただけると嬉しいです。



まさか妊娠話を書くなんて思わなかったよな、と書き直し前にこれを書いていたときにも思ったような気がいたします。書き直し含め二回も書いといて今更何言っても無駄な気はしますが。
妊娠の描写については書き直し前と変わらず、ほとんど同じ内容となっております。書き直すにあたって一番大事にしたかったのは、0組との関係性でした。長編のあとがきでも書いたような気がしますが、長編においても0組にどうクローズアップするか、それをすごく意識していたように思います。
0組と夢主の関係もですがそれ以上に、0組とクラサメさんの関係についてですね。彼がもし生き残ったなら、0組とはどうなったのかをすごく考えました。
後日譚最終話にて、ナギくんがクラサメさんに「あんたは0組にとっても夢主にとっても最大の手本なんだ。とにかく尊敬されているんだ」といったことを言うのですが、ナギくんはどこまでも外野だからこそそういうのが見えるんじゃないのかなと、ナギくんの立つべき立ち位置を考えながらこのセリフを書きました。

せっかくですので、大した話数でもないし、一話ずつのあとがきを書こうかな。

「さがさないでください」
 タイトルは家出するときの常套句ですね。実は後日譚のタイトルは大好きなお題サイトからお借りしてきたものでして、たいていは少し変えたりしているんですが、これはそのままですね。夢主の気持ちはまさにこうだなと思いました。身勝手な女性なので、探されると怖くなるんでしょう。大切だから置いてきた誰かに、大切だと思われているのが怖いんですね。
 このお話で一番書きたかったところはプロポーズです。言わずもがなですね!クラサメさんからのプロポーズですよ!前に書いていたときは直接的な表現をつい避けてしまったんですが、今回はどストレートに書きました。決めるとこ決めるお兄さん、それがクラサメさんなんだ……。
 クラサメさんが記憶を失くすシーンですが、零式主題歌、ゼロの一部を意識してワードを重ねています。あんまりやるとJで始まるところから連絡が来そうで怖いですが、これはどうしても書きたかった部分でもあります。ゼロって歌は、きっとマキナとレムの話が主で、でも0組の誰にも当てはまるという素晴らしすぎる主題歌だなと常々思っているんですが、だからこそ夢主もそれに添うようにしたかったのでした。
 そしてナギくんの若干の粗雑さが好きです。

「よたばなしのゆくえ」
 事情説明の回なのでさほど言うことないな……カヅサさんが「友達とその彼女のこんな話するの嫌だ!」って言うところ、書いてて妙に新鮮でした。嫌がることあるのか君……と困惑しましたねー。

「らせんの果てに」
 後家とまともな親の話。後家がどんな人間なのかは、正直私にもよくわからないのですが、まだ23歳の女性で、邪神(っぽいもの)を崇める一家の総領娘で狂った性癖と寝た相手がほぼ死ぬ(誰も好きになれない)挙げ句に寿命が短いという、なかなかてんこ盛りな人なので、内面はとても複雑でデリケートなんだろうなと思いながら書いた記憶があります。しかし夢主がご飯に色の薄いカレーぶっかけただけみたいな人間なのに対してこの盛り方よ……具だくさんカレーの上にコロッケとトンカツ載せられたような人間ですよね後家って……想像しただけで胸焼けしそうです。なんでこんな人書いたんだろう……最初は完全に、雑記の悪ふざけだったのですが、なぜか妙に根強い人気を発揮したので本編に昇格させたという経緯があります。
 ちなみに後家の名前ですが、エステル=エステル記から。ドゥルジ・ネス=ゾロアスター教の不浄なる悪神から。シルマニー=なんか適当。みたいな決め方をしています。夢主より凝ってる……愕然……あいつまだナツメ(仮)だっていうのに……。

「はらはら、溢れて」
 初っ端から優雅なお茶会。何があった。なぜ書いたか全く思い出せませんが、ナギくんと同じく外側に立つエミナさんやカヅサさんに、冷静なことを言ってほしかったんです。「もしクラサメくんの記憶が戻らないまま、夢主がいつもどおり好き勝手して、どこか遠くに身を落ち着けてしまったとして。クラサメくんはきっとそれを許さないわね」といったようなことを。
 夢主ばかりがクラサメさんを好きだとみんな思いがちで、時には私もそう思い込んでしまいそうになるんですが、クラサメさんはクラサメさんの方法で夢主をとても愛してくれています。ただ彼は己のエゴとそうでない感情を分けようとしている唯一の人なだけだと思います。他の誰もが、自己満足か献身かについては深く考えない長編でしたが、クラサメさんだけは夢主の将来を案じるあまりそればかり考えてくれていたのです。きっとそう。
 そして後家と戦い続行の夢主ですが、後家と夢主の考え方の違いを考えながら書いた話でした。後家との違いと言えば、長編の最後のほうにある「Act.47-a:Envy.」がまさにそういう話だったんですが。同じような話かな。後家は基本的に性行為を行う上でしか人を殺せないし、それを嫌がることは家的に許されないので楽しむ振りをするしかなく、今や楽しいのか振りなのか自分でもわかっていないところがありそうな気がします。一方の夢主は、この世の誰もが平等に奪い奪われるものという認識が強く、「男に奪われ続けるのが女である」とは考えていないんですよね。これは蒼龍(男性優位だった頃なので厳密には青龍ですね)の男女不平等感、朱雀の魔法さえ使えれば誰でも兵士の平等感、そういうぶつかり合いでもあるのかもしれません。どちらが真実であるにせよ、どちらの過去も消えないので、永遠に折り合いのつかない問題なんだろうなと思います。
 それから、後家をクラサメさんが後ろから殺すのは、性的なメタファーなのかもしれないと今になって恐怖しています。そんなつもりはなかった……なかった……。でも性行為の果てに必ず人を殺す後家が、そういう殺され方をするのはある意味きれいな終わりな気もしています。
 後家は夢主のことが実はとても好きなので、記憶のないクラサメさんがそれでも夢主を守ることについては思うところがありそうですね。しかし、「魔法のない世界で記憶を消す」という一大プロジェクトの説得力を出すためにまさかこんな面倒くさい捏造をするはめになるとは思いませんでした。カヅサさんのハッスルでもよかったんじゃないかなと思いつつ、それじゃシリアスには運べないよなと……思っております……。

「言葉さえ繋げない」
 夢主の影がうっすい回でしたね。でも実は後日譚の主題があるような気がします。
 それまでずっと、「一人だから冷静だ」だの「一人でなんとかしなきゃ」だの隣のナギくんをなんだと思っているんだきさまは!というようなセリフの目立った夢主が、クラサメさんのおかげで自分もまた一人ではないのだということを知る話ですね。クラサメさんがいるから一人でも大丈夫、なんて論法はそもそも成立しないということ。そしてそれを教えるのはナギくん、というのもすごく大事なポイントだなと思って書きました。ナギくんがなんでこんなに夢主を大事にしているかって、クラサメさんのためっていうのも大きいんですよね。0組に憧れる子がクラサメさんに憧れないはずないよねっていう発想から、ナギくんはクラサメさんが大好きということになりました。
 でもナギくんの言葉も、こんなにちゃんと夢主に届いたのは初めてのように思います。夢主の側にも、妊娠を経て変化がありました。
 後半はナギくんとクラサメくんの話でしたね。この二人の会話、妙にテンポがよくて好きです。パルプンテは最後までとっといてくださいよ!っつってわかるのかなこれ。私はパルプンテ苦手なタイプです。ともかく、夢主にとっては記憶のないクラサメさんは別人に近いんだけれども、ナギくんにとってはさほど変わりがないのですね。でも夢主のことを考えていてくれて、ナギくんがそれを少なからず喜んでいるので、ナギくんがいてくれてよかったなと、夢主にとっては彼もまた一つの大きな救いなんだよなと思いました。

「わかるとか、言うなよ」
 後家の葬式と、クラサメさんを探す夜の話でした。花に嵐の〜は井伏鱒二翻訳のあの詩を少し改変しています。だってあの世界に井伏いませんものね。そのまま使うのは世界観的にどうなのだ?と悩んだ結果です。実は後家ごときの葬式に四課出張るか?という疑問が尽きなかったんですが、結局心の声が「それくらいしてやれよ残存四課」と言うのでそれに従いました。葬式ぐらいしてやってくれ。
 後半がメインで、クラサメさんをつい探してしまう、という話です。これは書き直し前のものをベースに加筆修正した部分かな。ナギくんのプロポーズ(的セリフ)も同じですね。ともあれ、クラサメさんを探して、夜闇の中では同じクラサメさんであるように思ってキスするけれども、それから違う誰かだと気付く、そういう流れです。もう記憶なくってもいいんじゃないの?もう一回くっついちゃえばいいんじゃないの?と思うんですが、それは無理だよという夢主からの答えでした。一方のクラサメさんは、夢主のことが気になりだしていますね。一つ前の話で、もう「思い出すために努力をする」ってところにはたどり着いているので、すでに多少思うところがあったのでしょうが。
 まあ記憶なくして恋人に「思い出さなくっていいよ」なんて言われたら、それでもその恋人が明らかすぎるほど自分に強い好意を持っていたら、そりゃ思い出そうとすると思うんですけれども。ナギくんといい夢主といいクラサメさんに甘いですね。好きだからしょうがないか。0組の子たちは厳しいのでいいかんじにバランスとれてるということにします。ね。

「せつないじゃ済まない」
 だいぶ好きな話です。クラサメさん側の物語。荷台で足ぶらぶらさせて、若干の猫背になってあくびをする、ナギくんがチョコボを操る、想像しただけでもんどり打って悲鳴上げそうな光景です……垂涎もの……。この二人ホント好きです。おっとカルトの本拠地に乗り込むのは初めてか?この世のほとんどの人間にそんな経験はない。あーやだやだこのカップル人のキルサイト見切るのうまいんだから。この会話がすごく書きたかったんです。
 それから、後日譚がクラサメさんにとってはどういう話なのか、という話でもありました。夢主にとってはある意味いつもどおり、クラサメさんが好き、でも迷惑かけたくない、そういう話ですけれども、じゃあクラサメさんから見たらどうなるのか。記憶のないクラサメさんに夢主が価値を見出さないなんてことはないんですけれども、クラサメさんにはそう見えるんだろうなと思って。

「なんだって答えてあげる」
 記憶のないクラサメさんと向き合い始めた夢主の話が前半部分ですね。これはすごい成長だと思っていて、彼女には必要なことだったと思います。あなたの次に好きな人、とやらが誰だか覚えてらっしゃるでしょうか。ナギくんじゃないです(笑)
 そしてナギくんやその「二番目の人」にジェラシーし始めたクラサメさんのことを考えるともう胸がいっぱいです。なんでや。私関係ないんですけどね。
 後半ナギくん飛ばしてましたね。まさかバラすとは思ってなかったです。いや本当、バラさせないつもりだったんですけど、「じゃあいつ言うんだよ!!あの二人が!!」って強硬にナギくんが言い張るのでううむ……と思いつつ。

「いつまでもと僕は言った」
 カトルさんが初っ端からフルスロットル。クラサメさんとカトルさんの違いは、不敵な笑みと財力と気障なとこだと思っています。あれ……カトルさんのがもしかして……スペック高いの……?まあうちの夢主にスペックは関係ないんですが……。カトルさんの意図はおおよそ夢主が本文中に読み切っています。そのうえで精神的に疲労していますね。仲良しです。
 そして後半、レムとマキナがようやく出てきました。この二人な、なんかな、メインな割に長編ではあまり表に出せなかったからな……。夢主とクラサメさんはルルサス戦のときにあったことを、もう何一つ気にしていないんですが(修羅場くぐりすぎ問題)レムとマキナは気にするよなと思っていたんです。そして最終話に続きます。

「If you won't love you,I never want to say you good bye any more.(あなたがあなたを愛さなくても、さよならなんて二度と言いたくなかった)」
 最終話。本当は↑で収めておきたかったんですが、どうしても困難でオーバーしました……力量不足が見えるのはこんなときでもあります。
 0組が頑張る話です。書いてて、ああ0組ってみんなクラサメさんが大好きなんだなって思って、なんとか幸せになってもらいたいんだなって思って泣きたくなりました。愛があるんだなあと思って……。前述したことでもありますが、夢主も0組もクラサメさんを見てるから、自分のキャパシティを越えてもなんとかしようとしちゃったりするわけです。そのがむしゃらさが眩しいナギくんはたぶん、「お前らはそのままがいい」と思っていそうですが、原因であるクラサメさんに思うところもあるようです。
 後家のことについては、オリキャラを出すのがあまり好きではないのであまり語ることもないのですが(設定なんてあれ以上考えてない)、とりあえず全て片付いてよかったです。主人公たちが死体を掘り起こして焼く、なんてシーンは書きたくなかったので、薬が間に合ってくれて本当によかった。
 最後、二人が結婚したりなんだりっていうところはちゃんと書くべきなのでしょうが、ふたりとも似合わないのでたぶん拒否の構え……。二人が拒否しないのが不自然すぎて書き直したところあるので、もう二度と書かないです。後悔してます……。

「代替、それらの収束点」
 これ実は零式の長編中に書いていました。ジョーカーにばかりスポットライトを当ててしまったので、ティスのこともいずれ書きたいなと思います。
 彼ら二人はこの後どうなるんだろうかと思って、ある意味蛇足なつもりで書きましたが、夢主たちのその後の話として後日譚に載せました。個人的に、もしかしたら一番気に入っている話しかもしれないです。


タイトルは、下二話は別として縦につなげて読むと「さよならは言わせない」となります。クラサメさんの言葉でもあり、ナギくんの言葉でもあり、0組の言葉でもあるんだろうなと思います。
夢主はもう、誰にもさよならを言おうとはしないと思います。これは結局夢主が主人公の話ですので、彼女がそういう意味で成長したのであれば、誤解を恐れずに言うのなら「私の手を離れた」んだな、というようにも感じています。
本当に寂しいですし、なんだか悲しいですが、これで零式夢主の話は一応完全に終結となります。
ながらくお付き合いいただいた皆様に謝辞を述べさせていただきたく思います。本当にありがとうございました。
とても幸せな数年間でした。ありがとうございました。






なんか私死ぬみたいだな……死にません大丈夫です(笑)

槇/maki
27/6/2018
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