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後家が死んだ翌朝、ナギが死体を回収した。棺に納めて運び出し、午後には朱雀第六墓地の外れに埋葬をした。
戦前には魔導院の墓地は一つきりだったのに、今や魔導院のそれより広大な墓地が十はある。墓地がこんなに増えるというのは、誰も思いもしなかった話だ。
生き残っていた四課全員が立ち会い、短い葬式をした。誰かが言った、「覚えてる人間の死ってなぁ堪えるんだねぇ」、その言葉が妙に頭に残ったものだ。思えば、課員たちにとってそんなのは初めてのことだった。

花に嵐の喩えもあろう。
さよならだけが人生だ。

今更他人の死を悼む自分たちを嘲笑うような気持ちで、また誰かがそんなことを言った。
ナギが最後、どこぞで摘んできたのか毒々しい紫色の花を墓の前に置いた。

「何その花、見たことないんだけど……」

「俺も知らねぇよ、魔導院の中庭で一番目立ってたから引っこ抜いてきただけだし」

「雑草?雑草なの?まあいいけど……」

「無いよりゃマシだろ、花があれば扱いも」

魔導院にあるそれと違って、この墓地は雑多に大小さまざまの墓石が並んでいる。まして外れだから、大きな石を置いただけというような粗末な物も多い。後家の埋める場所を決めるまでに、おそらく何度か墓を踏んでいる。
後家の墓石は一応ちゃんと魔導院に用意してある墓石を持ってきたが、手が足りなくて名前を彫ることはできなかった。それでも、花でも供えてあれば、少しは尊重してもらえやしないかと、ナギが言うのはそういうちょっとした卑怯な心積もりだった。あるいは単純な思慮であったか。


喪服などないがどうせ黒いし、これが一番着慣れているしと、全員四課の武官服を着て魔導院から歩いてきたので、ひと目を集めて大変だった。第三墓地までは魔導院のすぐ近くにあるのだが、第四墓地以降は高い丘を迂回して来ることになるので帰り道を思うと少し憂鬱である。ほんの数十分程度、これだけのためにわざわざ四課全員で来たなんてちょっとバカみたいだな、ナギが笑い墓地を後にした。帰り道、植えたばかりの若い麦が斜陽の光で白く光っていた。西日の中の葬列は不気味だろうなと思った。


魔導院に戻った頃には、陽がとっぷり落ちていた。四課全員仕事をすっぽかして出てきているので、これからまた仕事が立て込んでいる。別に仲のいい仲間でもないから、何を言うでもなく解散して、各々仕事へ戻っていく。

ナツメも変わらず医療関係の仕事を引き受けているが、腹が目立つ前に魔導院は出るようナギに言われていた。どこでもいいけれど、少なくとも魔導院、とりわけ四課からは離れるべきだと。
四課は仲間でもお友達でもないし、普通の同僚でもない。ナツメだって四課内でさんざん恨みを買っている。妊娠なんて女にとっては人生で最も重い弱みで、まして戦争直後でみんなナーバスになっているからと。
実態がどうであれ、ナツメにとってどうであれ、幸せの象徴のようなものを抱えているのは事実で、誰もがナツメの幸せを喜んでくれるわけじゃない。
そう思うと、仕事も重要事は早く引き継ぎを始めなければならない。やはり0組にくらいは事情を話しておくべきか悩んでいる。


事前に医務室には今日仕事に出られないことは伝えてあったので、訓練生では対応できない治療だけ往診を行い、薬の在庫を洗い出した。さほど減っていない。
戦後すぐはひどい状態だった医務室を思い出して、ナツメは嘆息した。いろいろな場所が、正常に戻ろうとしている。
幸い、後任として任せられそうな人間は何人か思いつく。ナツメがいなくなっても、きっとなんとでもなるだろう。

ナツメが部屋に帰ってしばらくすると、ナギが酒と仕事を抱えてやってきた。心配半分と、四課が無人で寂しい半分、そんなところだろう。
いつもどおり手酌でナギは酒を飲み、ナツメは同じペースで水を飲む。

「仕事はどうだよ」

「そんなに立て込んでないわ。引き継ぎしてもなんとかなりそう」

「クラサメさんが記憶なくしてなくっても、結局しなきゃいけねー努力だしな。まあ、気張れ」

にしてもクラサメさんが記憶なくしてなかったら、順当にいってたのかね。
ナギはひとりごちるようにそう言ったが、ナツメはそうとは思わない。

「そういえばね」

「ん?」

「クラサメにプロポーズされた」

「ごひゅっ」

ナギは酒を噴いた。酒はナギがせっせか書いた書類をひどく滲ませたが、ナギはそれどころではないらしくむせ返って大騒ぎをしている。

「なにそれ!?なにそれ!!何だその急展開!!っていうかそれ、いつ、クラサメさんが記憶失くす前!?後!?」

「後なわけなくない!?」

「ああ、まあそれもそうか……いやしかしそうかあ、そんなことがね……」

ナギは何やらもごもごと口ごもり、なぜか顔を朱くしている。お前にじゃねえんだぞと思ったが、まあ昨日の話を聞く限りナギにもクラサメに何かしら思うところがあるようだし。
もう一度手酌した酒を口許に運び、ナギがひゅうと細い息を吐いて、「人間って幸せになるために生きてんだなぁって思うわ」と言った。

「なに、それ」

「いやさあ、いまさら思うことじゃねーのかもしれねぇけど、俺らは違ぇだろ。こういう人生歩んでると、幸せってやつが一番怖いもんだ」

幸せになると、いつしっぺ返しが来るのかと怖くなる。登れば登るほど、落ちる道も長い。
怖いから、幸せをかき集めて粉々になるまで叩き壊して、それでようやく安心する。そして壊したそれらから逃げて、そのうちまた幸せになって、その繰り返しだ。

「仕方ないよ。……それが咎なんだろうし。忘れて楽になることもできないなら、しょうがないのよ」

「……なあ。それじゃあいっそ、俺とどっか行くか」

「ん?」

「俺がお前をどっか遠くに連れてってやるよ。全部忘れて生きていくことができないんなら、互いにどうしようもねぇんだって知ってりゃ、変なことにはならねえだろ」

それもプロポーズみたいだな、そう思いながらもナツメは言わなかった。さすがに不機嫌になるに決まっている。
ナギはお家の事情だかなんだか知らないが、結婚というワードがナツメ以上にバッドワードなのである。適齢期を過ぎた女気取りだろうか。

「お前を助けるのは、クラサメさんじゃなきゃ駄目だ。でもちっと守るくらいなら俺でも十分じゃねえの」

「まあ……たしかに。そうかもしれないけどね、でもやめとく」

「ナギくんを振るつもりなの!?ヒッドイ!何様!?」

「何で唐突に笑い取ろうとすんの……そうじゃなくてさあ。私の罪は私のだから、ナギを巻き込みたいとは思わないってことであって」

「俺の罪には巻き込まれたくないんですね」

「そうともいいますね」

二人、つい笑ってしまってから、ナツメはテーブルに肘をついた。
この場合の罪や咎というのは、ただ精神的なものだけを指すのではない。人を殺して生きているから、殺されただけの熱量でナツメたちを恨み憎む人間がどこかにいるはずなのだ。報復の危険は一生付き纏うだろう。

「思うにさあ。私たちみたいなのが普通の男女みたいに生きていこうっていうのが、もうどっかおかしいんだろね」

「そうねえ……」

「でも、それでも普通に生きていこうとするのが……」

それでも人生を受け入れて、安易ではない努力をするということが。それがまさしく、生のあるべき姿なので。

――結局まともな男と家族になるなんてめんどくさかったんでしょ。

ああ、その通りだ。そうやって生きていくことが、一番面倒で、大変で、怖いのだ。

「ま、だから四課に、課内恋愛はありえない」

ナツメとナギは、いつだってこんなふうだ。性別よりもっと深くもっと単純な人間の分類で、同一の側に属している。
同性同士で添い遂げることを選ぶ種がないのと同じように、同属の人間は一緒になることなどありえない。

それがこんなに、何も言わなくても互いの全てわかりあっていられるんだから、やってられないよなあとナギが笑った。理解しているから、互いを愛し、守り、それと同じくらい見下して嫌ってもいる。
ナギが見つめる遠くにも、誰か焦がれる女でもいるんだろうかと、初めてそんなことを思ったナツメだった。








そして夜が更けて。
ナツメはふと、目を覚ました。ナツメが眠った後も仕事を続けていたらしいナギが目の前ですやすや眠っていた。全く他人のベッドを平然と使う男だなと呆れたが、しかし他人ではないのかと思い直した。ある意味自分たちは、よっぽどのことが無い限り互いの一番の、時には唯一の味方である。

星の降った後のような夜だ。ふと見上げた窓の外はだいぶん暗く、いつもなら見えるはずの月がない。普段生活していなかった部屋に時計などあるわけもなく、時間帯もわからぬまま燭台に火を灯して立ち上がった。ナギはどうせ起きないので放っておいて、軽い気持ちで外に出てみる。
魔導院の外縁部を、緩やかにカーブしながら守っていた柵は、先の戦争で損傷を受けたままだ。まだ生活圏の修繕も完全とは言えない状況なので、こちらが後回しなのは仕方がない。寮もいくつか破壊され、武官の寮こそ無事だが、候補生の寮、訓練生の寮は機能していないところもあるのだ。人間が減ったおかげでそれでも回せているという皮肉な事態をナギがけたけた泣きそうな顔で笑っていた。

崩れた生け垣を乗り越え、折れた柵の間を抜け、ナツメは魔導院の外に出た。

どこを目指すでもなくナツメは歩いた。元々体力のあるほうでもないから、すぐに疲れて少し息が上がったけれど、それも足を止めるには至らない。
自分がどこへ行きたいのかも知らぬまま、ナツメは歩き続ける。歩き続ける。歩き続ける。

歩き、続ける。

「……ああ、もう」

足を止めることができない。その程度のことすらできない己に苛立ち、恐怖する。

いや、止められないなんてことはありえないのだ。ナツメは足を止めたくない。このままどこかに行ってしまいたい。

寒気がしていた。ああせめて上着を着てくればと思ったが、もう一度戻って上着を着て出てくるなんてことはできない。だってこんなの間違っていると知っている。

戻らなければ。戻らなければ駄目だ。これはとても、間違っているのだ。愛して支えてくれる人たちがいて、それはクラサメのために為されることでもあって、じゃあナツメが今クラサメのためにできることはそれを受け入れて生きることだ。彼らの想いを無碍にするということは、クラサメの愛情を無碍にすることに等しい。記憶喪失なんて面倒に巻き込んでおいて、自分だけ辛くなったら逃げるなんてそんな、そんなこと、したくない。

「うわ、吐きそう……」

眼の奥が痺れるみたいで、足を踏み込むたび全身に痛みが波及する。それから逃れるために、一瞬だけ足を止めることに成功する。でもその瞬間、食道を締め上げる熱でえずいて、結局もう一度足を浮かせる。だめだった。止まれない。この苦しさが止むまで、歩き続けるしかない。
暗い世界の果てを見渡しても、どこにも月はなかった。海に白い光がたなびくように見えるけれど、あまりにか細い。足元を照らすほどではなかった。燭台も置いてきているから、足元は全く明らかではない。

四課で培った経験はこんなところでも活きる。ナツメは、道とは呼べないでこぼこの荒野をただ歩いていく。
目を使わないで、周囲の状況を把握する勘は四課で傷を負いながら学んだことだ。
四課の人間に強さはいらない、そんなものはあそこでは価値なんてなかった。何があっても生き延びることだけが、生きるということだった。薄汚い、どろのぬかるみで。

少しずつ少しずつ苦しみや吐き気が止んで、ナツメはゆっくり失速し、足を止めた。深く息を吐く。距離を正確に図る術はナツメには無いが、三十分程度は歩いてきてしまった。
一体何を探して、自分は、こんなところまで歩いてきてしまったのだろうか。

いったい、

「……クラサメ」

なにを。



声に出してしまったら、いよいよもって逃げ場がない。
ナツメは自分が何を探しているのかぐらい、最初からよくわかっている。
でも考えないように懸命に己を縛り付けてきた。考えたら、死にたくなりそうだったから。

「クラサメ」

どうせ応えてもらえない。わかっているのに、耐えられない。
一度決壊したものは、もう元には戻らない。頭の中がぐつぐつと痛み、煮立っている。貧血の気配がしている。朦朧としはじめる意識の片隅に、それでもぶら下がるのは彼の名前だけだ。
星が空に瞬いて、光はか細くて、世界を照らすにはまるで足りない。

ナツメは地面に膝を着いた。へたりこんで、冷たい風に深く息を吐き出す。
今ここにいてほしいのに。今だけでいいから、ここにいてほしいのに。

「クラサメ!!」

でも、いないから。もういないから。
どこにも。

「……なんだ」

そのとき、不意に応えが降った。
ナツメは突然後ろから掛けられた声に全身が硬直するのを感じる。動けない。まるで凍ってしまったみたいだった。
ややあって、ゆっくりと、首だけ振り返る。見下ろしていたのは、間違いなく……。

「クラサメ……」

「夜中に突然出て行くから何かあったのかと思ったぞ。……無事か」

彼だった。少しだけ心配そうに、彼はナツメを見ていた。
差し出された手につかまって立ち上がり、ナツメはついそのまま彼に抱きつく。懐かしくて愛おしい匂いがした。

「クラサメ……、ねぇ、いなくならないで……置いていかないで……」

「……置いてなんかいかない。だいたいどこに行くんだ、私には行くところなどどこにもないだろう。落ち着け、大丈夫だから」

背中を手が擦る。それでも寒くて、ナツメはクラサメに縋り付いた。腕の中に溺れ、いつもの癖で手を伸ばす。片手だけでクラサメのマスクの留め具を外した。
驚いたように、クラサメの目が見開かれる。それに一瞬疑問を抱くけれど、多分全部遅かった。どちらが迫ったのか、いや迫ったのは明らかにナツメなのだけれども、結局お互いの望むまま唇は重なった。

知っているにおいと味だった。ナツメは彼の太い首に腕を回して、やはり縋る。心臓が自分のものでないみたいに高く跳ね、ナツメは全身が沸騰するような感覚にくらくらした。

酩酊する直前のような覚束ない足元で、クラサメが支えてくれていなかったらすぐに倒れてしまっていただろうと思う。ゆっくり唇が離れて、至近距離で見つめ合う。
ナツメはその目の奥に、不意に戸惑いを見た。だからナツメも困惑した。すぐに、違和感の理由も知る。

「……違う」

違う。彼じゃない。自分の愛した彼じゃない。
クラサメなのかもしれない。端々に彼の気配を感じる。でも、彼はこんな顔で自分を見つめない。ナツメは後退る。
と、その腕をクラサメが掴んで止めた。動けなくなって、代わりに腕から熱が灯るみたいに心臓が高鳴った。

「お前のことは覚えていないが、……でも、何かあるのはわかる。私たちの間に何かあったのは、言われなくてもわかる。……まだ思い出せるかはわからないが、でもこんな風にどこかへ消えようとする必要があるのか?」

「消えようとなんて……してないよ。気が付いたらここにいただけ。クラサメを探してたのかもね」

「私は魔導院にいた」

「あなたじゃない」

諦めて笑って、クラサメの腕を振りほどく。今の彼にだけは甘えてはならない。だって覚えていないのだ。彼と関わってはならない。

「それでも、私だ。お前がさっき呼んでいたのは私だ」

「違うわ」

「違わない。思い出せなかったとしても、何もなかったことにはならない」

「……あはは……」

ナツメはつい、声を立てて笑った。クラサメがあまりに真剣で、少しずれていて、でも自分を救おうとしているんだとわかっていたから。それに素直に身を委ねてしまいたかった。
どうしようもない。思い出さなくてもいい、なんて気丈そうなことを言っておいて、いまさらこんなに打ちひしがれて恋しがってる。

「私たちね……もう十年近く一緒にいるの。いろいろあって、ここ五年くらいは離れてたけど。……出会ったのは白虎の森の中だった。私が殺されかけているところを、あなたが助けてくれて」

「……そうか」

クラサメはあの戸惑った表情のまま相槌を打った。覚えていないから、反応に困るのだろう。

「……初めて“そういうこと”になったのは、朱雀四天王があなたを残してみんな殺されたときのことだった。私たちは何も覚えてなくて、互いを信じるしかなくて、そういう特殊な状況下だったから……ある意味、そうするしかなかったんだと思う」

でも己はよく覚えている。暗い部屋、血の臭いがしていたことも。彼の傷を必死に塞いだことも。泣きそうで、指先が冷たくて、消えてしまいたいと何度も思いながらそれでも互いの存在を確かめていたことも。
それは、今も同じだ。いやいつだってそうだった。いつだって、クラサメが生きていることを知りたがった。

「あの過去でなかったなら、あなたは私を好きになってくれたと思う?」

月のない夜、クラサメは目を見開いてナツメを見つめ返していた。すぐ近くで。

「私は、ならなかったと思う」

結局それが、いつでも答えだ。ナツメは知っている。クラサメは否定の言葉をおそらく探して、でも思いつかなかったのだろう、結局視線を逸らした。

ナツメには、クラサメでなきゃだめだ。クラサメじゃないならそれだけで意味がない。

でもその逆は?クラサメは、ナツメでなければいけなかった?
ナツメはこれも否定する。

クラサメがナツメを想い続けてくれていたのは彼がそういう人間だからだ。誠実で、律儀で、一途だからだ。裏を返せば、それだけの理由だった。ナツメを覚えていないなら、彼の優しさが発揮される相手は別にナツメでなくても。

不意に光が差し込んで、ナツメははっと顔を上げる。玄武との旧国境、山脈の頂上から光が差していた。夜明けだ。
ナツメはなんだか笑い出しそうになって、実際喉を鳴らして笑い、困惑した顔のクラサメから身体を離した。もう大丈夫だと思った。不思議なことに、闇の中でなければ惑わずいられる気がした。

「迷惑かけてごめん。……戻ろうか。ナギが騒ぐ前に」

「……?なぜ、ナギ・ミナツチが騒ぐ?」

「私の部屋にいるから。そろそろ私がいないことに気づいてるかも」

「……、それは」

クラサメの横をすり抜けようとする直前、一瞬だけクラサメが腕を掴んだ。反射的に顔をあげると同時、クラサメは微妙な顔をしてぱっと手を離す。

「なに?」

「……なんでもない。気にするな」

妙に歯切れが悪い。一体なんだというのだろう。
クラサメが先に歩き出すのをナツメは追って歩いた。遠くの空に、星が霞む。濃い青の画用紙に垂らした白いインクみたいだ。空の色が明るくなるにつれて、見えなくなる。
クラサメの背中を見つめながら、ナツメは不意に己の下腹で、どくりと何かが脈打つ気配を感じた。
そこにあるはずの、小さな心臓の鼓動だろうかと、そんなことを思った。




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