わたしを離さないで







「……いいかな。南のほうで騒動を起こしてくれればそれでいいの。この装置が起動すればモンスターが集まって、救世院の視線はそっちに集中するはずだから」

それは明くる日の深夜のこと、ルカとライトニングは、暗黒街を覆う壁の上に立っていた。ルカが手渡した小さな箱型の機械を丁寧に受け取ったライトニングは、ひっくり返したりして起動方法を確かめながらため息をつく。

「よくもまぁこんな機械を作ったな……」

「私が混沌を吸い寄せるから、それを応用できないかってね。……っていうのさえ建前で、私が混沌に呑まれないように、みんなが必死になってくれたんだ。ジルもヤーグも先輩も、スノウくんもノエルも……それから、もちろん、――くんも」

ルカの声は最後だけ、風に呑まれた。希望の名をきちんと発したはずなのに、足元さえ危ぶませる濁流の如き音にかき消されて、ライトニングには届かない。
黙れと言われている。それに腹立たしく思いながらも、ルカは前を向く。
腹立たしい。そう、それでいい。混沌を解さないあの神に立ち向かう方法はこれだけしかないのだから、せめてもただ恨みに思う。ひたすら憎む、それ以外に反抗の手段はない。

「その混乱に乗じて、私は逃げる。私達が作った自警団は、私達がいなくても動くように鍛えてあるから、市民への影響は少ないと思う。もちろん無傷で済むなんて保証はひとかけらもないけど、……どうせこの世界はもうあと一週間かそこら、なんでしょう?」

「……お前」

「それくらいは感じ取れるのさっ。いつになく濃いぃからね、あンのくそったれの神の気配が。臭いんだよね……加齢臭かな?かな?」

驚いて目を見開く彼女に向けてあざ笑うように言うと、ルカは鼻を鳴らした。至高神など、いくらでも悪しざまに言う。それで目をつけられたって上等。ルカに手を出すことが難しいのはわかっているので、好き放題させてもらうのだ。
そう、ブーニベルゼはルカに直接危害を加えることがない。それがエトロの加護がまだ生きているからなのか、それともまだ利用価値があるのか、はたまた小物だからと放って置かれているのかはわからないのだが、ともかく遠回しな嫌がらせしかできないらしい。凶悪殺人犯として救世院に手配させるだとか、その程度がせいぜいだ。

「この逃亡、考えたのは誰なんだ?」

「んーと……言い出したのはリグディだよ。 あいつは他人のことに一番よく気がつくし、私達よりは一歩引いて見てるしねぇ。ぶっちゃけこんな手があるなんて思いもしなかったんだ。閉じこもるしかなくてどうしようもなくて、それで四人思いつめてたところに、リグディがぽろっと」

じゃあ逃げちまえよ、と。
あからさまに面倒くさそうに、適当な口ぶりで。

「なるほど、リグディ大尉だったか。賢い奴らばっかりだからな、お前の周りは。……それにしても、意外だな」

「ん?何が?」

「こういう事態でお前が逃げるなんて。どうせなら救世院まるごとぶっ潰して、死体の山のてっぺんで高笑いするものだとばかり」

「あんたの中の私は悪鬼か何かなのか?世界の敵なのか?ん?」

そうは言い返すものの、言いたいことは理解できた。逃げるべきだとして、それでも無理を通してみたりするのが己の最大の短所だとルカも知っているからだ。こんなに怒りに燃えているのに、それでもこの街から逃げ出す。人間が作ったわけではない、妙に整然と整えられたこの街から消える。人工コクーンを出てからずっと生きてきた場所を捨てて。

「……ま、私もちょっとは理解したのさ。自分が無理をすればなんとかなるって考え方がどれほど脆いかをね。失敗して、ごめんね無理でしたって後から内実を明かされた側がどれほど辛いか。たとえ私がどれほど愛されてたって、否、愛されてるからこそやっちゃならんよな」

「そうだな。……時として仕方ないが」

「ライトは無理しすぎ。でも、まさかこんなことになるなんて思わなかったんだ。……ごめんね」

「何が」

「セラちゃん。守れなかった」

ルカの言葉に、ライトニングは息を飲んだ。
守れると思ったのかと聞かれたら、当然だと答える。まさか瞳になっているなんて思わなくて、まさか守れないなんて考えもしなかった。彼女に迫る脅威はてっきりモンスターくらいなもんだと思っていて、それなりに力をつけているのを追いかけながら知って安堵した。紛れもない慢心だ。
かといって、追いついたって救えた自信がないあたりが情けないが。

「お前のせいじゃないよ……あれは、私のせいなんだ。私がセラを危険に曝して……でも」

でも。ライトニングの告げた逆接。顔を上げると、目があった。一瞬沈黙が落ちた。風だけが耳を澄ませるように、二人の間に居座っている。だから二人は口を開かなかった。ただ視線だけをぶつけあい、感情を探る。
戦いの最中に何度もしてきたこと。命を預け合って、背中を合わせて剣を振るった。それは、千年の時が過ぎたとしても五百年の月日が横たわっても隔たれることがない。

心の中は、ブーニベルゼにはわからない。だから。
ルカは受け取った。ライトニングの想いを、考えを。セラが今どこにいるのかも。

「……そう。わかった。……私にできることは、もうなさそうだね」

「ああ」

「理解したよ。そう、この世界は順当に終わるところだから、私の入る隙間はないんだ。……まっ、せいぜい私が起こした変化に寄り添って死んでいくとするかね」

そう言って笑うと、ライトニングは一瞬目を丸く見開いたあとで破顔した。そしてひとしきり笑ったあとで、お前は本当にもう全部気づいているんだな、と呟いた。

「そりゃそうだろ、てんかむそーのルカちゃんでっせ。……お、時間だ」

南で時計塔の鐘が鳴る。それが始まりの合図だった。今、シドとリグディが北のウィルダネスへの連結道路の鍵をこじ開けに向かっている。そして、ジルとヤーグは道路への途中で控えており、ルカは変装して二人を回収するように時間以内に到達しなければならない。
全員が無事今夜を生き残り、ルカがこの街を脱出する。それが目的なので、全員の安全第一だ。でなければ、やはりルカはこんな逃亡劇に了承などしなかったろう。

「じゃあ、行くね。ごめんね、危険な役回りを頼んじゃうけど」

「気にするな。お前の安全のためなら、それなりになんだってするさ」

「やだ胸きゅん。……本当にありがとう。あのね、これからたった数日だから、私達だけで楽しく過ごすことにしたんだぁ」

ルカは壁の端に立って、進路を見つめる。そして目深にフードを被り、髪を隠し、ブーツの紐を結び直した。黒いコートならば救済の連中にも見えないので、不審者扱いは受けないだろうから、あとはヘマさえしなければいい。さて、ここから飛び降りたら物語は進んでいく。その合間、息継ぎの一瞬。

ルカは腰の剣を確かめると、反対方向に進もうとするライトニングを振り返った。

「ねぇライト。あの子は……ホープくんは、ブーニベルゼに捕まったんだよ」

「は?何を……」

「まじめに言ってるんだよエクレール」

一度も呼んだことのない名前を呼んだのは、これが最後の機会だからだった。ライトニングは目を大きく見開いた。

「あのくそったれに気をつけて。私は、ライトのために行動できるけど、それでも保証は何一つないんだ。だからね、」

また落ちる。きっとこれがルカの最後の落下。落ち続ける人生だなぁといまさらながらに笑えるが。

「あの子のことは、ライトが助けないと駄目なの!」

最後、怒鳴った声は届いただろうか。言えない言葉、邪魔する風。
気付け。気付いてくれ。
お前の仲間はあの白い月の、方舟の中になどいないから。本当の仲間は地を這って、生き延びて、みんなお前を待っていたのだ。

世界の終わりの十三日。その間にライトニングが気付いてくれることを祈りながら、ルカは危なげなく地面に着地する。
そして走りだせば、もう振り返ることはない。旧市街から北駅の駅前へ足早に通り過ぎる途中で、救世院の兵士たちが南駅への道を急ぐのを見かけた。ライトニングが早くも行動を開始しているらしい。それなら、そろそろ恨みに思われている頃かななんて内心苦笑する。
商業区画を抜けると墓所に飛び込んで、ルカは剣を抜いた。ここから先はモンスターが出るからだ。

暗闇の最中、墓所で待っていたヤーグと合流し、片手を上げて「待った?」なんて軽く訊ねる。ヤーグもまた同じくフードで顔を隠した姿で肩を竦めてみせた。そしてルカが足を止めないよう隣を走り始める。

「首尾は」

「問題なしだよ」

「……信用していいのか」

「当然。ライトはいつも味方だったんですよ?」

ぐっ、と喉に息をつまらせたヤーグの肩を軽く小突く。千年も前のことをひきずってなんかいない。今更だ。
幸せな五百年だったから。戦ってばかりで、でも、みんな一緒にいられた。それだけでもう、何も文句なんてない。

「ジル!」

「遅かったわね」

金の髪を後ろで束ね、完全にフードに隠したジルが道の先で微笑む。と同時にルカの進行方向に紫の石のようなものが浮き上がった。混沌の核だ。
ルカは一瞬で剣を振りぬいて核を貫く。と同時に周囲に湧くように溢れだしたモンスターはヤーグが一閃、切り飛ばした。ジルが的確に、二人の剣から逃れたモンスターを撃ち抜いていく。

「急いで!」

「うん!ヤーグ、ほらこっち!」

モンスターの死骸を踏みつけ、ルカたちは更に走る。ジルの手を引いて、ルカは時折湧くモンスターの首を切り裂いていく。ヤーグと連携して敵を屠りながら、三人はひたすらに西を目指す。

「きゃあああ!」

その途中、ゾモックという大型のモンスターに襲われている子供に遭遇した。なぜ墓所に、と思ったが、地面に転げて泣きわめく子供の周りには花が散らばっていた。ああ、成程。手向けに。
ルカはそう思うと同時、高く跳ねて剣先を迷いなくゾモックの首の奥へ刺し通した。

「早く、こっちに来なさい!」

「ジル、居住区に連れて行け!ここは私とルカがっ……」

「あああ硬いなぁお前は硬いなぁぁぁ!!」

「ルカ!!先走るな、一人で戦うな!」

ヤーグの声も言葉の意味もわかってはいたが、ルカが今猛攻をやめればジルの方へ向かう危険があった。伴って、その腕に守られている幼子の方へも。
それならルカが先走らず誰が戦うというのだ。結局、無理しいなところは五百年経っても変わらない。
ゾモックの唸り声が頭上で響き、そして同時に風を纏った攻撃が眼前に迫り来る。
――まずい、避けられない。一瞬行動をためらった、それがルカの明暗を分けた。

「ルカ、動くな!!」

直後。
とてつもない威力のサンダガが、空からゾモックの身体目掛けて襲い来る。間近で見ていたルカには、それが深く深くモンスターの身体をえぐったのが感覚でわかった。そしてゾモックはぐらぐらとその巨体を揺らして、ゆっくりと横に倒れていく。
そしてゾモックが姿を消した、その向こうには、見慣れた巨躯と涼しげな黒髪。シド・レインズが立っていた。

「先輩!」

「無事か」

「うん。みんな無事。ありがとう、助かった」

その体術もさることながら、この数百年で右に出る者のないほど魔法を極めてしまった恋人は、それはよかったと薄く笑った。こういう顔がやたらと似合う男である。

シドとリグディが向こう側から扉を開けて、全員で逃げる。最初からそういう計画だった。しかしルカは詳細をライトニングに話していない。ライトニングはおそらく、ルカだけを逃してシドたちは事態を収拾するために戻ると思っているだろう。
でも、それはできなかった。もう片時だって離れていることはできない。もうじきすべてが終わるとなれば、尚更。ライトニングにすべてを押し付けていることに罪悪感は禁じ得ないが、まぁちょっとした仕返しということで。代わりと言ってはなんだけれども、彼女の窮地には絶対に駆けつける心づもりである。それで勘弁願いたい。

と、シドの後ろからリグディが現れ、「全員揃ったみたいだな」と口角を上げた。

「そうね。ジル、その子は……」

「……気絶してるわ」

「そりゃあなぁ……」

「仕方ないな。ジル、街の方へ運ぼう。居住区にまで行けばいいだろう」

「ヤーグが運んでちょうだい。さすがに私には持てないわ」

ジルとヤーグが子供を運んでいくのを見送る。ルカがついていっては台無しになる可能性があるので、シドが手を取って止めた。ついていくわけがないだろうがと思うが、信用がないのはわかっているので仕方ない。

「あらあら、楽しそうねー」

「……あんたにゃ負けるけどねぇ」

突如として後ろからかかった声にルカはゆっくりと振り返った。その先では、バチあたりにも墓石に腰掛けて、見慣れた少女がにたにたと笑っている。可愛らしい相貌に似合う笑み、薄紅色のサイドテール、楽しげな笑い声。彼女は、名をルミナと言った。
十三年前、突如として現れて、ルカを助けたことから妙にルカたちに馴染んでいる。ルカにとっては、時折腹立たしくも退屈しのぎには良い友人だ。

「ルミナ、ところであんたの名前、由来はなんてーの?私は女神様が決めてるんですけどね」

「名前……そうだなぁ。羨ましかったのよ、光が。雷光が。でも同時に疎ましくて……結局こうなっちゃった。光になりたかったから」

「あんたのことを助けられないのがどうにも心残りだよ。……でも、私じゃ駄目なんでしょ」

「駄目。あなたとは、出会ったのが遅すぎた」

ルミナは笑わない目でそう言った。ルカの不甲斐なさを責めているようにも思った。

「ルカ、ルミナと他人にはわからない会話を繰り広げるな。妙に物騒だ」

「ああ先輩、ごめんなさ、」

「ちょっと、邪魔しないでよね死人さん。あんたたちなんか、本当はこの時代にいないはずなんだから。ルカは死人としてのソイツらの代わりもしなさいよ」

「死人の代わりって……ルミナちゃーん、言っていいことと悪いことがあるとは思わないのカナー?」

妙に不機嫌な様子に驚きつつも、殴られたいのカナー?と近寄れば、ルミナは慌てて墓石を盾にした。だからなんと罰当たりな。

「あ、そういやルミナどうかしたの?わざわざお見送りかな」

「まぁねー。一応今生の別れでしょ?だから、来てあげたのよ」

「はっ、そりゃ泣けてくるわ」

「リグディのおじさんは黙っててよね」

「おじっ……ルミナお前なぁ!!」

「にしてもえぐいことするよねー、救世院の連中が混沌避けに飲んでる薬にあーんな変な毒を混ぜるなんて。おかげで今頃、救世院の兵士たちは大混乱。ライトニングもきっと、聞いてた話とまるきり違って戸惑ってるんでしょうね」

毒。そう呼ぶのは、少しだけだが語弊がある。カプセル錠に、ソウルシード……命になり損なった、混沌の塊を砕いたものを詰めただけ。それだけなら大して害にはならない。
ただ、ライトニングに渡した装置を近くで使えば、その力を肥大化させられる。内側からモンスターに、その魂を染めていく。時間はかかるが、ゆっくりとモンスターに姿を変えていってしまう。なんともえげつない、一種の呪いだ。ルカは嬉々としてソウルシードを砕き、不得意なちまちました作業に満面の笑みで取り組んでいたが。閉じこもらざるを得なかった十年以上の月日をルカとて恨んでいるのだ。
だが。

「まぁ薬のこと話したの私だけど、入れ替えたのも私だけどーっ?」

「えぐいことをしているのはお前だけですね、うん」

「はっ、そこに気付くとはやはり天才か。……ふふ、だってちょっとムカつくから。しかたないじゃん。……それに、あなたの味方でいないと駄目なんだ。もう千年前から、そうなんだもん」

諦めたように笑うルミナを見つめて、ルカは俯いた。彼女は、ルカを助けない道を選べない。だから、またひとりになる。ルミナは俯いて、ひとりぼっちだ、と呟くように言った。ルカの胸が、きりりと痛む。
ジルとヤーグが戻ってきて、ルミナに気付いて、警戒するように隣に立った。それを見上げて尚、ルミナはつらそうな顔をした。ルカはどんな瞬間でもひとりではない、そのことがルミナにとってどれほど羨ましくて妬ましいことか、ルカだってわかっている。

「……ルミナは、ひとりにはならないよ」

「無責任」

「うぐっ……、いや、何も考えず喋ってるわけじゃないから本当、みんなこれ勘違いしてるけどっ……」

「違ったの?」

「違ったのか」

「違うはずない」

「何も考えてないよな」

「待ってなんで全員で私フルボッコなのおかしい!……いやそうじゃなくて、」

ジル、ヤーグ、シド、リグディと全力で否定されながらも、ルカは頭を振ってルミナに伝えるべきことを口にする。

「ルミナはひとりじゃないんだよ。ひとりでいなきゃいけないと思ったから、ルミナになったんだろうけど。でも私がひとりじゃないのと同じなの。ルミナにとっては、ヴァニラとかファングとかサッズとかスノウくん……それにホープくんが、必ずついてるから。もちろん私も、最後まで一緒だよ」

「無責任全開……」

「ほんっとに信用ないな私!なに、怒ってんの!?やっぱりセラちゃんのことを怒ってるのかな!?」

「怒ってないよ。なんにも、怒ってなんかない」

ルミナはそういって、ようやく少しだけ笑った。同時、ふいに東の空に光が刺すように煌めいて、夜明けが近いことに気付く。最初に慌てたのはルミナだった。

「あーもう、急がないと全部無駄になっちゃうじゃない!早く行って、ほらほらっ……」

「お、おう、わかった。……あーしかし飛空艇とはこれでしばらくお別れ……」

「いい加減にしなさいよもう」

「ルカ、こっちだ」

「ん!」

「しかしよくもまぁこの道をこじ開けたな……」

全員、揃って歩き出す。地面は途中から固く、コンクリートの感覚に変わり、そしてゆっくり土へと変化していく。ひさびさの“外”、ルカは喜びのあまり両隣のジルとヤーグの手を握る。一瞬身じろぎされたが、振り払われることはない。光が斜めに横から差して、全員分の影が少しずつ重なりあっていた。
ルカはゆっくり、かつての仲間の面影を映す一人の少女を振り返る。

「ルミナ、また来世!」

「ぷっ……あはは!生まれ変わる気満々かー、いいねいいね。……うん、また来世でね!」

彼女は飛び跳ねるようにして手を振った。それに笑みを返し、ルカはひたすら前へ進む。
世界の終わりの十三日を、最愛の彼らと過ごせることに、紛れも無い喜びを感じながらも、最後の大仕事に思いを馳せて。

「まずは、ウィルダネスで問題児たちに会おうかね」

「また単独で神殿に入ったらブチ殺すわよ」

「ジルさん目がマジですやめてください。……一緒にいられる時間限られてるんですし、しませんよーんなこと」

朝陽が全身を照らす中、五人は広大な森の中へと足を踏み入れた。そしてそこで、全員が足を止めた。ルカはつないでいた手をそっと離し、腰の剣に手をかける。
まだ問題は山積みだが、ともかく目下最大の問題は。

「キングベヒーモスさんチッス……」

「早速か」

「さっさと殺して先に進みましょう。寝てなくて辛いのよね」

咆哮を上げるキングベヒーモスを睨み、最愛の人々とともにルカは走りだす。
全員一緒なら、どこまでだって行ける気がしていた。








LR13長編ページ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -