Act.33






ナツメを追うわけではないにしても、0組とて最深部を目指して侵攻を始める。撤退の合図があるまでは潜らなければならないし、乱雑に言葉が行き交うCOMMを聞いている限りその時はまだずっと先であろうとクイーンが小さくため息をついた。
彼らは、ナツメが起こすだけ起こした混乱の最中、ゆっくりその足を進めていく。合流してしまった以上別れる意味もなかろうと、当初の予定とは違い六人で。

「しかしこんな、たった一人で敵陣をぶち壊すとはな……」

「予測していませんでしたね……あまりにも、規格外です」

「……でも、これで終わるわけない」

ケイトが唇を噛んで、そう言った。じっと睨む視線の先でビリビリと稲光が空気中に霧散する。もう相当に距離が開いていて、ナツメの攻撃の結果かは量りかねたが、0組の進路であることは確かだった。

「ナツメは、戦えないって言ってたよね。誰もが国の希望を背負ってるわけじゃないって」

「ああ、そういえば白虎でそんなことを言っていたな」

「それって、戦場を知らないってことだと思うんだ」

ケイトは視線を逸らさない。そこにナツメがいると固く信じているように、彼女は動かない。サイスがその横顔を見て、小さく舌打ちをした。

「そこまではあたしらが関知するところじゃない」

「だとしても、放っておいたら危険だってわかってるのに……」

「ああ。そうだな。あいつは死ぬかもな」

キングの声は静かで、極めて端的だった。

「戦場を知らない。それは致命的な弱点になる。こんな大規模戦闘なら、尚更な」

0組は、戦場を知っている。
戦場は、暗殺とは違う。誰かを殺すという本質が同じだとしても、その繰り返しにすぎないとしても、それでも。

戦場は何かが違うのだ。
ナツメが、それを知らないのなら。

「……戦場では、何だって起こるのよ」

戦場に出た時点で確実なことなど何もない。隊長の言葉を思い出して、ケイトは声を震わせた。
それでも彼らにできることはないと、他でもないナツメが決めた。

ナツメがナツメの人生の“使いみち”を決めた以上、ナツメの世界はそうやって完結する。ただそれだけだった。







「(……なんか、おかしい?)」

兵が減った。先ほどから、ほとんど見かけていない。
ナツメは陣形についてもろくに知識のない人間だが、それでもこれほどの深部に兵を配置しないなど聞いたことがない。
それでも走るしかないからナツメは必死に前へ進むけれども、兵士の数は減るばかりであった。

「(どうして司令官に近づくにつれて兵が減る……?何か勘違いしていた?司令官の位置を見誤った?)」

あまりに無人なので焦燥さえ生まれるが、奥にいないならどこにいるのか。調べる術はない。
もし奥へたどり着いても司令官が見つからなかったら、挟撃を演じて白虎を混乱させようか。そんなことをしたら朱雀までもが混乱しそうだが、おそらく既に大混乱に包まれているので今更気にしなくていいか。COMMの電源などとうに切ってあるナツメは走りながら自軍をそうして切り捨てて、手の中に燻ぶる炎で目前の兵たちを焼き殺した。
どうやらナツメの存在は完全に認識されているらしく、後衛でありながら彼らは銃を構えて厳戒態勢にあった。それでも、見えない敵になど立ち向かえまい。

でも。

「……無人?」

少ないどころか、ゼロになった。それに気付いてつい足を止める、と同時だった。
キュルキュルキュル、と、金属が擦れる高い音が微かにした。
砲台が、照準を合わせる音。

「うそでしょっ……?」

ナツメがこの戦いに単身で挑めたのは、敵が全戦力を用いてナツメを駆逐できなかった、という点が大きい。不可視状態となった彼女を殺すには、それこそ絨毯爆撃でもするしかないが、そんなことをすれば白虎軍の被害とて甚大となる。だからこそ彼女の脅威は、コロッサスや機銃兵といった、短距離から中距離を攻撃する敵だけであった。

けれど、ナツメの周りに兵がいないのなら、爆撃が可能になってしまう。

ナツメはもう一度走りだす。どこまでの範囲を爆撃する気かわからないが、もっと奥まで走らなければ。司令官のいるところまで行ければ、そこまでは爆撃できないはずだから。
息がきれているか、足が限界か、そんなこと考える暇もなかった。生きるべきか死ぬべきか考える隙間はなかった。
即死でさえなければ、ナツメはどんな状態からも戦線に復帰できる。けれど裏を返せば、即死だけは、即死からだけは逃げられないのである。

「(殺されるっ……!?)」

背後で爆発が起きて、断続的に爆撃は続いていく。ナツメの鼓膜を劈いて、脳を内側から叩くようだった。

わなわなと唇が震えているが、それは恐怖からではなかった。恐怖まで、感情がたどり着いていなかった。
ナツメは知らない。知らなかった。一瞬の間に数百人が死んで、数万の兵がいとも簡単に屠られる戦場のこと。
そこでは、何でも起こる。ナツメの知らないことが、何でも。

今の今まで、混乱していたのは皇国軍だったはずだった。けれど、今混乱しているのはナツメの頭だ。
どうしてこんな。どうしてこんなことに。

ナツメが白虎兵を殺すのが簡単だったように、彼らがナツメを殺すのだって別に難しいことじゃない。
ナツメはわかっていなかったし、今更学んだってもう遅い。もうナツメには、走る以外に道がないのだ。
真っ赤に熱されたフライパンに載せられたみたいに、彼女の足は跳ねて前へ進む。弾かれた破片が腕を裂き腿を裂き、背中を深々突き刺した。インビジが解けて、ベールが脱げるように彼女の姿が現出する。

「ぐぁッ……!?」

爆弾の直撃を免れた彼女を、爆風が包み込む。身を守るために、頭を抱えて身体を丸めるのが精一杯だった。宙を凄まじい速度で投げ飛ばされ、コンテナに叩きつけられてようやく止まった。もはや痛みではなかった。痛みを感じない彼女でさえ、全てを忘れるほどの激痛であった。
痛覚は、そもそも己の身体を守るためのサインであるという。ならばきっと、これはナツメの身体が発する最後の警告なのだろう。

これ以上戦ってはいけない。これ以上痛めつけられるのなら、心臓を止めて、苦痛から解放してあげる。

「っひ、ぎ、ぐ、ごぷっ」

そんなに血を吐くくらいなら、もう耐えなくっていい。血なら死ねば止まる。死ねばもう苦しくない。

「うぐ……ぎ……」

死ねばいい。
誰かがナツメの隣に立っているような気がした。その誰かが、ナツメを見下ろして言う。

来なくていい。
お前はそこで、寝ていればいい。
大事な誰かはその間に死ぬけれど、お前はそれまでそこで寝ていればいい。

「……う、ごぽっ」

喉から口にかけて溜まった血を吐き出して、ナツメの喉が一瞬だけクリアになる。
次が込み上げて来る前に、ナツメは目を開けた。
誰だろうと思って、視線を巡らせる。首が動かなかったから、見える領域はそう広くなくて、だからナツメにその声の主は見つけられなかった。

「……?」

ナツメは、その声の主を見つけない。
現実に存在したかさえ、定かではなかった。

だけど、ナツメは反論したかった。

「ふ……っざけ、んなっつの」

緑の光がナツメを包み、まず焼けた喉を治療した。逆方向にねじ曲がった右腕を治して、背中に手を伸ばして肺を貫く大きな金属片を掴み、抜いた。

「ごふっ、あ、ぐ……ケアル」

背中を塞いで、肺をまともな形に戻して、心臓に刻まれた裂傷も消して。
ナツメは反論をする。

「生きるか死ぬかは……もうどうだっていい」

あの日、クラサメが手を差し伸べてくれた、あの日から。

震える唇、かじかむ指先、手を伸ばす彼。
ナツメは必死だった。他人の体温があんなにも温かいと知った日から、その温度を失わないために生きている。

だから、死ぬまで温度を失わないことだけ。
ナツメにとって大事なのは、もうそれだけだから。

クラサメにだって、それは邪魔させない。

「寝てる暇があるわけないでしょ……!」

ナツメはコンテナに捕まって立ち上がり、魔晶石を使って魔力を回復した。貧血でふらつきながらもなんとか走りだす。そしてコンテナ群を抜けると、ナツメは思ったよりずっと彼女の目的に近づいていたことを知る。
妙にコンテナもフェンスも何もない、まっさらとした大地。間違いなく、白虎の風が吹いていた。

そしてそこには、飛行する兵器が一騎、待機姿勢で待っていた。確かガブリエルといった、最新鋭の戦闘機だ。

『……お前は……』

「……?その声……」

ナツメは聞き覚えのある声に戸惑って、魔法は撃たなかった。敵機もまた、同じく攻撃してこなかった。ナツメはその声を覚えている。
カトル・バシュタール、白雷と呼ばれる皇国最強のパイロットだ。階級を考えても、その男が何故ここにいるのか、分からないわけがなかった。

『お前が、なぜここに?お前は諜報員では……皇国では、諜報員は決して表には出ないものだが』

「うちでは違うわね。……うちは、諜報員はほとんど懲罰部隊だから」

『成程。それにしてもこんなところにいるのは可笑しいが、……よもや、我が軍を無差別攻撃したのはお前か?』

「だったら何だってのよ?」

それでもため息と共に、ナツメは手の中に雷を生んだ。バチバチと迸る電気を指先で操りながら、カトル・バシュタールのいるであろうコックピットを見つめている。
標的がやっと見つかった。そこにあるのは、なぜか喜びではなかった。けれども、ナツメは薄く微笑む。
こんな終わりも悪くないと思った。

『そうか……それならば、残念だ』

「はぁ?」

『お前をこんなところで殺さねばならないのは、残念だと言っている』

「……何言ってんの?口説いてんの?」

突然のセリフにナツメが拍子抜けしてそう問うと、カトル・バシュタールは似合わないくらいに笑い声を漏らした。

『く、クククク……そうか、そうも聞こえるか……ククク』

「何笑ってんのよ腹立つわね」

『そうだな、それなら、これは言うべきではないのかもしれんが……』

ナツメの視線の先で、カトル・バシュタールはゆっくり戦闘準備を始める。待機状態の兵器は、すぐには戦闘態勢に戻れない。

『お前の名前を、教えてくれ』

「……っぷ、あははは!ああ確かに、そんな約束もあったわね」

名前は、次がもしあったら。
去り際に彼女はそう言った。それを律儀にも覚えていたカトル・バシュタールについ笑いながら、ナツメは名乗ることにした。

「ナツメよ。朱雀の諜報員」

『ナツメか。苗字は?』

「さぁ?こちとら身分が卑しくてね、あなたみたいなのとは違うんで」

『無いならそれでいい』

カトル・バシュタールが、まだ楽しげな色を孕む声で言った。
それを妙に穏やかな気持ちで聞くナツメが手の中で操る雷鎚が、大きさ以上に精度を、電圧を上げていく。それが手の中から飛び出していかないように、ナツメの意識はそちらへ集中し始めた。

「まさかあなたが総大将なんてね。この戦いにパイロットの役目はいらないでしょうに……」

『何か問題が?』

「いいえ。別に何も問題はない。でもそうね……少しうれしいかもしれない」

ああ、これじゃ口説いているのは自分の方だな、なんて思ったりして。

身体は重かった。頭はズキズキと痛んだ。胸の奥は、心臓がもうやめろとぎしぎし音を立てていた。
でも、どこか、口だけが軽やかに。

「私を殺すなら、白虎にはあなたしかいないもの。あなたがいいなと思ってた」

彼はどこか、クラサメに面差しが似ている気がするから。

ナツメは反対の手に、光の粒子を集めた。同時詠唱。詠唱中のサンダガを手にとどめたままアラウドを解放しているので、厳密には同時詠唱とは呼べないかもしれなかった。
それでも、魔導院に同じことをできる人間が何人いるかわからないほどの行為を、彼女は真っ白に血の気の失せた顔で行った。本来彼女にはできないようなことだ。それでも、彼女はそれを成した。

魔力には到底恵まれなかった。どれだけ鍛錬を積んでも、望んだ力は手に入らなかった。四課へ落ちる前に、魔力の増強は諦めていた。
それが、ただ一度戦場に現れただけで、どうしてこんなに研ぎ澄まされていくのか。今になって。あのときのナツメにできることは、諜報しかなかったのに。


もっと強かったら良かったな、と思う。もしナツメに力があれば、五年前のあの日、ナツメとクラサメはふたりきりになることなんてなかった。
ナツメは弱くて、仕方がない。0組の子供たちが平然と立つ戦場を這うのに、尋常でないほどの準備が要った。この世界には、ナツメにできることなんてほとんど存在しないのだ。

「そしてそれ以上に……あなたを殺すなら私だわ!!」

重なったアラウドとサンダガが、ナツメの手の中から放たれる。稲妻の軌跡は目で追うのも難しい速度で、一瞬でカトル・バシュタールの眼前へ迫っていった。

皇帝の血筋を、恨んだことはなかった。少なくとも白虎を出るまでは。
それでも、ナツメにとってはカトル・バシュタールも、皇帝と同じく皇国軍と同じく“自分を助けてくれなかったもの”だ。だから、許さずにいられるなら許さない。

サンダガは奇妙なほどにあっさりと厚い装甲に阻まれる。しかしアラウドは逸れながらも追尾機能を発揮して食らいつき、一瞬だがガブリエルの動きを鈍らせた。
それでもナツメの目の前を瞬時に飛び立ち、視界から外れる。必死に目で追いながら、次の詠唱を始めるも、ガブリエルは早々に攻撃を開始した。

跳び退いたナツメの足元をレーザーが抉る。身体能力では明らかに裏をかけない相手だとわかっていた。それなら、魔法で圧倒するしかない。

「(まずいな)」

魔晶石を割って魔力を回復しながら、ナツメは内心舌打ちをした。先ほどまでサンダガだけで黙らせてきた連中とはわけが違う。サンダガが阻まれたということは、特殊な防御用の装甲を使っているというわけで、敵の最大の弱点が埋められたわけだ。しかもあれだけ長時間の詠唱をしたサンダガだ、どうしたってサンダー系魔法での攻撃は通用しない。
でもアラウドだけは、違った。弱点を埋めるために、他の何かがおざなりになっている可能性はある。とはいえ、アラウドなんて詠唱に時間のかかる魔法をまた撃たせてくれるとも思えない。その上あれだけの速度で移動する相手に攻撃を当てるのだって至難の業だ。
ならばどうするべきか。

ナツメは背中を見せないよう気をつけながら、コンテナの影を選んで移動する。敵を狙えるポイントに立つまで焦るべきではないと思った。戦闘機相手では素人考えにすぎないが、クラサメはいつもナツメに焦るなと言っていた。痴漢撃退以外の体術は教えてくれなかったけれども、それだって存外役に立つ。

「(まぁ問題は、そのチャンスがなかなか訪れないことなんだけどね……!)」

絶対帰還者の名は伊達じゃないということだろう。ナツメが逆立ちしたって敵わない、絶対の力がそこにはあった。
それでも。

「私だって、四課で五年生きてんだから……!」

四課では戦闘技術はあまり評価されない。強いからといって、任務が成功するとは限らないからだ。
その代わり、臨機応変な能力が求められる。娼婦にも令嬢にも一瞬で化ける能力、相手の力量を正確に図る能力、殺すべき相手を判断する能力……それから、絶対に勝てない戦闘を、ひっくり返す能力が。

第一段階、ナツメはまずファイア・ライフルで雑な狙撃を行う。現在地を教えてやるためだ。当然、ガブリエルの攻撃はナツメのいた場所に集中する。逃げきれるかは賭けだが、勝率はゼロじゃない。
ナツメはアボイド魔法を駆使してその砲撃を必死に避ける。そして背後に魔晶石をに放り投げ、爆発を誘った。空高くから砲撃していたガブリエルの、ちょうど攻撃の矛先を狙って。
爆発するよう設定された魔晶石に、砲撃なんて加えれば、大きな爆発が起こるのは当然である。

「くっ……!」

爆発と同時、ナツメもまた吹き飛ばされて地面を転がったが、今度は爆発を察知し地面に伏せていたので被害が少なく、すぐさま起き上がりコンテナの影へ飛び込むことができた。
そして、息を潜めて隙を待つ。

ガブリエルは絶対に、ナツメの生死を確認するはずだ。雑ながらも行われていた反撃が、爆発とともに止まったなら。それも、こんなコンテナ地帯で。
コンテナには、燃料だって詰まっているはずなのだから、魔晶石を使った爆発が疑われる心配もない。ナツメは手の中にファイガ・ライフルを凝縮していった。魔晶石で回復した魔力が、最大限研ぎ澄まされるように。

ガブリエルが高度を下げるのを眺めながら茶番じみた窮地に笑いそうになって、そんな自分に驚いた。追い詰められているのに、笑っている場合ではない。
そして、追い詰める唯一のチャンスだというのに、笑っている場合では。

「お願い、届いて……」

ナツメの掌握する炎は、少しずつ色を変える。詠唱に集中するナツメはそれに気付きもしなかった。
ナツメの願いが、炎を輝かせていく。明るい赤に染まってから少しずつ透けて、光のような色になる。

ファイア系魔法は、どんなに修練したとしても炎の規模が大きくなるばかりで、それ以外の進化はありえない。しかしナツメの手の中で、そのありえない変化は起きていた。炎の色の変化は、物質を燃焼させているのでなければ、温度の変化を意味する。
1000℃を超えて尚鋭くなる炎は、最後、膨張を始めた。大きく大きく膨らんで、ナツメの爪先を乗り越えた。

そして、ナツメの手を離れて、一瞬だった。
空を裂いて、赤い閃光を残して。

ナツメは祈るように、じっと空の果てを睨む。逆光に眩むガブリエルを確実に捉えるために、最後の一瞬まで目を瞑るまいと。

当たれ当たれ当たれ当たれ、当たれ。当たれ!!

確実な起死回生、最善の一手。ナツメの睨む軌道なら、確実にガブリエルを撃ち落とす。


はず。


だった。


いなければ。


そこに、“それ”がいなければ。


信じられない強度の障壁が、ファイガを逸し、跳ね返す。
ナツメは呆然と立ち尽くしていた。からからに乾いた喉がひりつき、驚くことさえ満足にできなかった。
ナツメの魔法は明らかに規格外で、止められる人間がいるはずがなかった。そう、人間ならば。

白い仮面をした、白いマントの男。
ガブリエルとナツメの間に立ちはだかり、ナツメの魔法を阻んだその主は、じっとナツメを見つめていた。

仮面に見覚えはない。真っ白のその出で立ちにも。
けれどその体格も立ち方も、ナツメの眼の奥に彷彿とさせる人間がいる。

「マキナ……?」

親しくなんてない。彼のいいところも悪いところも、一つとして知らない。
それでも数ヶ月、副隊長として授業に同伴してきて、その姿を今更見間違えはしない。

「ルシ……」

どうして。
呟いた言葉は、誰にも届かず砂塵に消えた。

そこにいたのは、マキナだったのだ。







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