20


 きっと殺されると思っていた。
 逃げ切るか、殺されるか、どちらかだと。そして、己のしてしまったことを思えば、彼に殺されるのは仕方のないことなのだと、覚悟を決めていたのだ。
 だから、こんなことになるとは、ヴァニラは思っていなかったのだ。まさか、PSICOMにサッズとともに捕らえられ、監禁され処刑されることになるとは。どんなにひどくなったって、自分ひとりだろうと思っていたのに。
まだ考えが甘かった。ファングにいつも守られてばっかりだった弱い子供の頃から、何も変わっていないのだ。

「……私の、せいだね」

 そしていま、ヴァニラたちは、パラメキアと呼ばれる巨大な飛空艇の一室に閉じ込められている。このまま待っていれば、また兵士がやってきて、ヴァニラたちは処刑されるのだ。
 全部が全部、己の存在のせい。コクーンで目覚めなければ、異跡の外に出なければ。セラに出会いさえしなければよかったのに。
 それなら、誰も巻き込まずに済んだかもしれないのに……。

「いや……もういい、後悔なんて今更だ」

 サッズがそう呟いたときだ。
 遠くから、カンカンと硬い床を叩く音が響いて聞こえてきた。それが金属の床を叩く軍用靴の音だということが解る程度には、彼女もコクーンのことを解しはじめている。と、同時。

「各員に通達、ケース緑発令!繰り返す、……」
「ひゃっ!?」

 各所に置かれたスピーカーがヴンヴン鳴りながらそう喚き散らし、ヴァニラは驚いて肩を跳ねさせてしまった。これもまた、コクーンでは街中でもよくあることなので知識としては理解しているが、慣れについては別の話だ。

「ケースグリーン……?一体何だってんだ」

 そして、サッズが悪態をつく頃には、兵たちがヴァニラとサッズを軟禁している部屋の扉を外から開いていた。数名の兵は銃を携え中に飛び込んでくると、ヴァニラの腕を強く引っ掴む。痛みにヴァニラが小さく呻いた。

「立て!ルシは移送だ!」
「お前もだ、立て!」

 掴まれた腕の痛みで一瞬パニックになり、とっさの反応ができなかった。そんなヴァニラに比べれば、サッズの判断は遥かに上等だった。突然掴まれ体勢を崩した彼の髪の中から飛び出した一匹のひなチョコボが、勢いよく兵の頭を覆うヘルメットに激突する。PSICOM先鋭の兵士が、突然の襲撃者の正体を理解するまでに一秒。それだけあれば、既に戦闘に慣れきっているサッズの頭は、掃討までの作戦を瞬時に組み立てられる。

「おらァッ」

 サッズは目の前の兵士に思い切り体当たりし、部屋の角のコンテナに叩きつける。決死の行動はついでに二人ほど巻き込んで戦闘不能に追い込んだ。
 だが、最後の兵がサッズに銃を突きつけるのをヴァニラは見た。あとはとっさの行動で、地面に落ちていた銃を拾い上げる。

「えい!」

 ヴァニラは銃の使い方を知らないから、せいぜい殴りつけるくらいにしか使えない。けれどヴァニラの力任せの攻撃は少なからず効力を発揮し、兵は力なく崩れ落ちる。
 その兵士が視界から消えたことで、サッズの鋭い視線と目が合う。

「逃げるぜ」

 サッズは短く言った。「ただし、今回は前向きにな」その言葉が、ずっと逃げ続けてきたヴァニラの道程を否定するもので、けれどこれからの戦いの全てを肯定するようなものに思えたので、ヴァニラは少し泣きたくなった。

 隣の部屋には、自分たちの武器が安置されていた。壊されたり、廃棄されたりしていないのは意外だった。サッズとヴァニラはほとんど自ら投降したとも言えるような形でPSICOMの虜囚となったためかもしれない。
 武器を拾い上げると心に少し余裕が戻ってくるような気がしたが、一方で兵の乱入を受け遠ざかっていた澱んだ気持ちがまた浮上してきた。

「助かって……いいのかな」

 自分が全ての元凶なのに。ヴァニラさえいなければパージも起きなかったし、サッズの子供が、ルシになることだって。
 サッズは短く、じゃあ死ぬか、そう聞いた。ヴァニラは答えに窮し、俯くことしかできない。視界の上端で、サッズの口角が苦く上がったのが見えた。

「それも怖いんだろ? ……俺もだ。おっかなびっくりで、死ぬに死ねねえ臆病もんだ。だったら、居直って生き延びてやる。ドッジが「父ちゃんみっともねえ!」なんて笑うかもしれないけどよ」
「それでも、戦うんだね」
「ああ。ドッジも助けて、俺も生き残る。全員で、生き残る」

 笑っていこうぜ。進むも戻るも地獄ならよ。
 その覚悟を決めた笑顔は、きっとヴァニラにはできないものだった。ヴァニラは頷き、彼の後を追った。




 広いパラメキアだったが、ルカが先導する以上は迷うこともない。多少は「あっれーまた道増えてやがるな? 下士官が迷うんだよねえ。迷子の子猫ちゃんを見つけたらちゃんと殺すんですよー」なんてこともあったりなかったりしたけれど、概ね迷いなく道を進んでいる。廊下に入る前からライフルで監視カメラを壊しているので、何度か「対応変更!」と叫ぶアナウンスが流れ、そのたびにルカは「おっキレてるキレてる」と笑っていた。血まみれのピクニックと呼べるくらいには、全体的に何事もない道程であった。

 だが途中、ばったりと兵の一人と出くわして、ルカの様子は変わった。

「ありゃ」

 いつもなら先陣切って斬りかかるルカが小さく声を上げるのみなので、ルシたちも攻撃を躊躇うようだった。その兵は女で、他の兵に比べ重装備、重たそうなボウガンを引きずっている。「レイダ」ルカが呼ぶと、彼女は僅かに首を傾け、ルカの背後のルシたちを順に見た。

「何してるの、こんなとこで」
「何って、あんたに置いてかれたから」
「それはマジですまねえと思ってるけど置いてったんじゃなくって拉致されたんだよね」
「知ってる」
「……ルカ、また知り合いか」
「そんな嫌そうな顔されても。私これでも大佐なんですからほんとは知り合いばっかりなんだぜ?」

 ルシ内では最高警戒度を発揮するファングが低い声で問うたが、ルカは苦笑しそう返すしかない。

「こちらレイダ、私の元部下ね。レイダ、ご挨拶」
「……こんなバカ身内に抱え込んで苦労するわねルシ共。そこのバカの二十倍優秀な部下が私よ」
「ご覧の通り、ちと高飛車なところが玉に瑕です」

 ルカの言葉に、レイダ・カーライル少尉はふんと鼻を鳴らした。

「全く、あんたが残るって言うから私も残ってやったのに、早々にパージされてんじゃないですよ。今更抜けらんないしどーしてくれるの」
「それについてはほんとすまないなーとは思ってるんだけど、どーしてあげることもできないな。今から騎兵隊行く?」
「シド・レインズとだけは一生関わりたくない、死んでもいや!!!」
「そうだと思ったよお……」
「だいいちあんたが守ってくれるって言うからあんたの部下になったのに、あんたの部下でいるためにレインズの部下になるとか本末転倒でしょ!」
「うん、うん、ごめんて」
「レインズの知り合いでもあるのか……」
「しかもなんだか、すごく嫌ってますね」
「あの男は女には嫌われるタイプだ。私もそう思ったぜ」
「そこ、人の婚約者の悪口で盛り上がらない。もう。レイダはちょっと先輩に人生の目標を叩き壊されただけだ。……さて、それで、カーライル少尉? 君はどういうスタンスでそこにいるのかな」

 ルカが転送装置に指を引っ掛け、銃剣を取り出すと空気が変わった。たとえ知己でも、戦闘が必要なのかと。
 別段ルカにそのつもりはない。レイダ次第だ。

「一度でもあんたの部下だった人間を、ナバート中佐が信用するわけないじゃない? まあロッシュ中佐が拾ってくれたんだけど、あの人今エデンで治療中だからね」
「ヤーグは……どうしてる?」

 聞きながら、ルカは僅かに体に力を籠めた。何かの衝撃に耐えようとするかのような動きだ。レイダはそれを鼻で笑うような顔をしながらも、「無事よ」と優しげな声で言った。

「弾は貫通、内臓も概ね無事。緊急手術とケアル魔法を駆使してるから、あと数時間で復帰可能になる」
「よかっ、……よかった? 数時間で復帰? こンのブラック聖府が!」
「何をいまさら。あんただって一日二時間とかしか寝てなかった時期あるでしょ。ま、それで、立て続けに上司が離脱したせいで、私はナバート中佐じきじきに、あのバカを殺してこないと簡易法廷で銃殺刑ねって言われちゃってんの」
「……は?」

 ボウガンに番う矢。その先端はきっちりルカを狙っている。ルカは驚いて、諦めたように笑うその顔を見ていた。バシュ、放たれた音は後から聞こえた。
 ほんとうに一瞬以下のこと、ルカはさっと僅かに首を傾けて避けた。矢はルカの顔の横を素早く通り過ぎ背後の壁に突き刺さった。避けなければ間違いなく、当たっていた。

「あーあ、やっぱり無理じゃん。ったく、着く側を間違えたわ。それか、アインズたちと一緒に辞めとくんだったな」
「お前今普通に殺そうとしたね? お前を先輩から守り続けてやってきた上司の顔のど真ん中撃とうとしたね!?」
「当たんなかったんだからいいじゃない。っていうか守るもクソも、それで今度はあんたが私の人生めちゃくちゃにしてんじゃないのよ。……ま、敢闘賞くらいは認められるでしょ。そして拷問された私はルシ二人が拘束されている部屋の場所を吐いてしまうのだった。2F9B-412ってね」
「……レイダ」
「なんて顔してんのよ、上司のくせに」
「さらに敢闘ポイント稼ぐためにそれはブラフだな。……並び替えて、有り得るのは、1B4Fの229か」
「あっはっは、もう、信用がないんだから。……ほら、早く、やんなさいよ」

 レイダが目を閉じる。ルカは銃剣をしまい込み、代わりに買ってあったナイフを取り出した。歩いて、レイダに近づき、一思いに下腹を突き刺す。

「う、ぐッ……」
「ごめんな。こんなことに巻き込んで」
「早く……帰ってきて」

 ルカはレイダの頬を一度だけ撫でた。憎らしくも、大事な部下の一人だ。こんなことはしたくないし、しないですんだらよかったのに。

 レイダは壁に身を預ける。顔色がどんどん悪くなる。足元に血が少しずつ垂れていく。

「抜くなよ。ちゃんと、嘘を教えたと皆には言え。それで、すぐに治療を。この負傷を理由に、今すぐこの艦を離れろ」
「わかってるわ。早く行ってよ」

 ルカは彼女から離れ、ルシたちに合流、言葉もなく彼らを先導して走り始める。背後からスノウが、「おい、あれ部下なんだろ、なんであんなこと!」そう叫んだ。

「聞いてたでしょ、私がやらなきゃ殺される。ジルはそれくらいやる。そうなったら、……どうやって許すべきかわかんないしさ」
「お前、まだ本気で敵を許すのなんだの言ってるのかよ」
「そのためにここにいる。ファルシを倒して、全員解放する」
「そうだな。これ以上ファルシの好きにさせるかよ」

 意気込んで言うスノウに、ルカは薄く微笑んだ。本当に好ましい男だと思っている。シドにさえ出会わなければ、こういう男と恋愛したほうが人生はずっとマシだったろうなとどこかで思ったりもする。
 まあ、それはそれ。ルカにはこれ以外の人生もないのだ。
 だが、そんなルカの言葉を聞き流せない人間もいる。ファングが舌打ちして、ルカの腕を掴んだ。

「お前、おかしいんじゃねえの。聞いた限りだと、ファルシに操られてるにしたって、お前を裏切って殺そうとしてる奴らだろ。たとえファルシを殺したって、元通りには」
「それ以上言わないでよ。そんなこと考えてたら進めなくなんじゃん」

 ルカはそれが一番怖い。どこに至っても苦しみしかないと思うことが。ファングはルカの顔を覗き込み、すぐ顔をそむけた。「……悪い」そんなにひどい顔をしているだろうか。

「ま、別に?生命倫理の死んでるらしールカさんとしては、殺されかけたくらいなんでもないんだよ。ね。それでいいじゃん」
「変なやつだなお前は」

 それからも兵との戦闘を繰り返しつつ、右翼甲板デッキに出た。ヴァニラたちが捕らえられているのが、レイダの情報通りに地下ならば、一度甲板に出て非常用階段で一気に下まで降りるのが早いと踏んだからだ。
 が、当然の如く兵器が待ち構えていたので、乱戦になる。ルカも機関銃で対応しつつ、ルシたちの最後尾についた。やはりルシの魔法が火力ソースの大半を占めるので、ルカは先頭に立たないほうがよい。
 兵が吹き飛ばされ、兵器が爆破されるのを見るに、なんだか感慨深いものがある。

「人間が必死こいて作ったものも、続けた命も、ファルシが与えた能力の前には無意味ということ。笑わせてくれるぜ」
「ルカ! 急げ!!」
「アイアイサー」

 機関銃を引き戻して走る先、先頭を行くファングの眼の前で、突如爆発が起きた。皆々敵兵と思って身構える。そこはまさにルカが目的地としていた非常階段に繋がる道だったので、ルートを潰されたかとルカは舌打ちをしたが、爆炎と熱風、黒い煙から飛び出してきたのが見覚えのある人間だったので、ぽかんと口を開けてしまった。

「ヴァニラ!!!」

 ファングが叫び、駆け寄る。煙を吸って咳き込んでいた少女も彼女に気づくとぱっと顔を上げ、「ファング!」とその名を呼ぶ。そこにいたのはヴァニラとサッズだったのだ。
 ルカたちが救援に駆けつける中、彼らもまた脱出への一歩を踏み出していたのだと思って、ルカはなんだかそのことが少しうれしく、同じだけ寂しかった。彼らと目的意識が重なるたび、ルカは翻って少し悲しい。いままでそういうことは、ジルとヤーグに対してのみ存在した心だったからだ。彼らがいまそこにいないから、代わりにルシたちをそこに座らせているような気がして、ぞっとしてしまうのだ。

 例えば心が鏡なら、相手の心を映して、読み取れるのかもしれないのに。ままならねえな、とため息混じりに言った時、不意に空からエンジン音が響いた。

「敵だ! 散開!」
「またかよクソッ」

 せっかくの再会に水を差されたファングは唸り、槍を空へと向けた。ファルシ=フェニックスの光を遮って迫りくる兵器カラヴィンカ、ルカは定石通り羽のように見える部分を狙う。
 生物はたいてい、生態系への最適化としてそういう形をしている。兵器は残念ながら作り手の思惑が出てしまうけれど、それでも意図があって取る形だ。上昇するために使っているのはターボエンジンで、羽は方向の調整と、自家発電に使われている。
 ルカが腰元の転送装置から引き抜いたショットガンで左右の羽を断ち切れば、カラヴィンカは浮遊状態を保てず地に落ちる。予備電力を利用して攻撃だけは行おうとしてくるのをホープの風魔法が妨害し、スノウの豪腕が叩き潰した。

「実に鮮やか、いい手並みだこと」
「ルカもショットガンでそれだけの精度の射撃ができるのはすげえよ。俺らも地元にいたときは魔物と戦うのに使ってたけどさ、やっぱ命中精度がどうにもな、無駄撃ちしちまうっていうか」
「ライト姉ちゃん、君の地元どうなってんの? 一般人の武装は推奨してないんだが? 警備軍仕事してねーの?」
「次そう呼んだら頭を撃ち抜く。……警備軍はきちんと仕事をしていた、こいつらが平然と出張ってくるんだ。余計な仕事を増やすなと言っても聞きやしない」
「そっかあ。PSICOMの活動範囲にいなくてよかったねえ」

 ルカは「田舎はおおらかでいいねえ」と、朗らかに笑いながら言った。実際、PSICOMの眼の届くところでそんなことをしていれば、彼らが正義のために戦っていようが危険因子すぎるので逮捕していたことだろう。抵抗すれば射殺已む無しの案件だ。いや、たぶん、警備軍の兵が故意に隠蔽していたのだろう。地元の若者を守るために。

 ファングがカラヴィンカにとどめを刺すのをルカは見て、ショットガンを転送装置にしまい込む。「しかし、ヤーグの作った兵器を壊すのは胸が痛いわねえ」なんてひとりごちてみる。カラヴィンカは戦略運用兵站管理室の所属だ。室長を兼任ヤーグはただ裁可を下しているだけだが、それでもなんだか、正しいことをしていると胸を張れない。

「兵器は兵器だ、ロッシュ中佐じゃない」

 隣にいたライトニングの言葉には頷くしかなかった。まったくもってごもっともだ。

 カラヴィンカを破壊し終え、突き立てた槍もそのままに、ファングは駆け寄るヴァニラを抱きしめた。それだけなら微笑ましい話だが、ファングが突然ヴァニラのスカートを捲り上げ、烙印の状態をチェックし始めたので反射的にバッと男衆三人が顔を背けた。

「突然女人のスカート捲んのはやめなさいよ、条例違反だし。逮捕するぞ」
「条例違反は逮捕できないだろ、お前本当に軍高官か?」
「好きな時に人を逮捕できないなら軍高官なんてなる意味ないだろ!」
「お前みたいなやつが言うといくらなんでも物騒が過ぎる……」

 ルカとライトニングがくだらないことを言う背後で、ファングはじっくりヴァニラの印を確認していた。傍から見ると女子のスカートに頭突っ込む婦人なのだが、それでいいのだろうか。

「よし、まだ余裕だな」
「ファング、私本当は……」
「心配させやがって。……あとで死ぬほど説教してやる」

 まあコクーンの条例だの公序良俗だのといったことはひとまず、再会が叶ったことはよかった。さて、これで一応、最重要目標を果たしたことになる。サッズが肩を竦め、ライトニングとスノウ、ルカを見遣った。

「それで、今後のご予定は?」
「聖府転覆!」

 スノウが胸を張って活き活きと答える。
 ……いや間違ってないけどその言い方なんかやだなあ。ひっくり返してあとは放置みたいじゃん。ルカが微妙な顔をする横、ライトニングが真剣な顔でスノウの簡潔な四字熟語の中身を解説する。

「上手くいけば、コクーンを人の手に取り戻せる。ファルシに毒された聖府の欺瞞を暴くんだ」
「上手くいったら、奇跡ですけどね」

 はは、とホープが少しだけ心配の色を滲ませてつぶやいた。後ろからファングがその背をどこか自慢げに叩く。そして必死に不安と戦う仲間を励ますように、力強い声で笑って言う。

「大丈夫だ、奇跡はうちらの得意技だからな!!」

 誰もがそれに笑った。道は続いている、奇跡が繋いでくれているのだと。

 そんなわけがない。コクーンで起きる不可思議な現象は全てがファルシの思し召しに過ぎないのだと、そう信じているルカは、曖昧に微笑んだだけだったが。



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