失墜へのカウントダウン
おそらく最初から、何かがおかしいということには気付いていた。
水面下で巻き起こる止めどない変化はそのどれもが私に存在を知覚させまいとしていて、いっそあからさまなほどわかりやすい。だから、旅が始まる前にすでに、日常が終わってしまう可能性は悟っていた。
それが嫌だった。嫌だから、全て話して欲しかった。
漏れた声はひっそりと反響して、でもあなたは聞こえない振りをする。
いや、本当に聞こえていないのだ。私の声なんて、聞く必要はないから。そういう×、だったから。
それならばと、ついに問うのもやめる。けれどずっと望んでいた。
その手をもう一度掴みたかった。触れてもらいたかった。
最後の瞬間、隣にいてくれたらどんなにいいか。
後から思えば、望んでいたのは、ただそれだけだった。
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