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寄付金集めのためのパーティが行われる直前、容易を整えたルカはリグディとともに会場の警備の最終確認をしていた。
珍しくも窮屈なひざ下の長さのスカートを履かされて、ルカは朝からうつろな目をしていた。スカートが嫌だとか、フォーマルな場ではまるで意味のない苦情を申し立てたいわけではない。動きやすいという一点のみで短めのパンツスタイルを取ることが多いルカだが、スカートだってもともと所持していないわけでもないのだ。問題は経緯にある。

「おい、大丈夫かよお前……」

「ぇあ……?ああ、ダイジョーブダイジョーブ、生きてるし」

「目ぇ死んでんぞ」

「ダイジョーブダイジョーブ、生きてるし」

ぐっと親指を立ててはみたが、リグディは呆れたような困ったような顔をするばかりだった。問題はないのだがなぁと内心でだけ苦笑してみる。残念ながら、表情にまでは昇華されなかった。

「第一さーあ、たたき起こしてすることがこーでぃねぇとですか……イジメですか嫌がらせですか……あの人何?なんで時々思い出したように私に女子力要求する?(物理)じゃだめなのか?」

「そりゃ駄目だろ、普通の成人女性としては」

「はっはっは、ゴルゴノプスを素手で捻り潰す女を普通とな。毒されてるねぇあんたも」

「まぁそこをクローズアップすりゃゴリラだけど」

「今なんつった捻り潰すぞコラ」

気を使うのが故意に下手くそな悪友の頭をガシィと掴んだ時だった。不意に後ろに気配が立った。妙に知っている、不思議な感覚に一瞬とらわれる。そして、直後。

「どっせーい!」

ぶわ、とスカートが上向きに、後ろから捲り上げられる。

「今日はあわーい水色のレースかー!花の柄が実によく似合うねルカ!」

「……ああ」

振り返った先の、にやにやという笑み。ルカはこの顔を知っている。

「中の人ネタか……」

「ちょおぉぉい!?コラコラコラコラ、無能力者じゃないから!やめてーレベル0判定するのやめてー!」

「ノリノリじゃねーか。あとわからない人多いよこの話」

「そうよう、今を生きようよルカ

「意気揚々とスカート捲っといて何言ってんだお前?」

見知った顔をした、知らない少女。薄紅色のサイドテールを楽しげに揺らして、彼女は微笑む。

「はじめまして、ルカ。私はルミナ。何に気付いても、黙っててね?」

「……その顔に似合わねーキャラをまぁ」

なんて堂々と。ルカはようやく表情を崩して苦笑した。あの毅然とした彼女の顔には、いくら幼くともなんて似合わないのかと。

「ちぇいさー!……なんちゃって?」

「ああ、ビリビリも兼ねちゃうんですか。合理的ねー」

「本体はビリビリピリピリしてるんだもんっ」

と、彼女が微笑む隣に、ジルが駆け込んでくる。彼女は珍しく金の髪を振り乱し、額は汗すら滲んで見える。

ルカ、大変よ!……あの二人が、目覚めた!」

「え」

「ふふん」

その二人、が誰を指しているのかわからないでもないルカは驚いて目を見開く。隣でルミナが喉を鳴らして笑った。
ルカが救世院に手配される、数日前の出来事であった。






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