「名前、頼みがあるんだ」
「何ですか?」
「君の血を分けて欲しいんだ」
話を聞くと、吉良さんはDIOの薬によって吸血鬼になってしまったらしい。口から覗く八重歯がいつもよりも長い。
「いいですよ」
「ありがとう、名前」
私はソファーに座る吉良さんの前に立つ。吉良さんが私の左手をとり、口元に持っていく。
「っ、」
私の手首に吉良さんの唇が触れ、牙を立てる。ぶつりと皮膚が裂ける感触がして、血が手首から手に伝う。指先から床に滴り落ちそうになる血を舌で掬う。
「…はぁ、君の血は美味いな」
私の目を見て言う吉良さんに顔が熱くなるのを感じた。吉良さんが私の皮膚を舐める感覚や、舌がちろちろと指の間を這う様子を見るのが恥ずかしくてぎゅっと目を閉じる。
するとくらりとして床に座り込んでしまう。
「名前!」
「あれ、目眩が…」
「すまない、血を吸いすぎたようだね。休むといい」
そう言うと吉良さんは私の身体をソファーに寝かせて、頭は吉良さんの膝に乗せられる。
「頭、重いですよね」
起き上がろうとすると吉良さんの手が起き上がるのを阻む。
「君が気を遣う必要はないんだ。貧血になったのも僕の責任だ」
吉良さんが私の髪をすくように撫でる。それが気持ちよくて、すぐに私は意識を手放した。