庇う(ホル・ホース)

俺の今回の依頼は暗殺だった。普段も似たような依頼を受けているが、まさか標的の護衛が女だとは思わなかった。
俺が銃を持っているのに気が付くと咄嗟に標的を庇った。女は肩に銃弾を受けて倒れる。その間に標的は車に乗って走り去った。残された女のところに行くと女は俺に殴りかかってくる。

「おい、動くな!傷に障る!」
「黙れ、お前を標的の元へ向かわせるわけにはいかないんだ!」

これじゃあ埒があかない。女の手を捻りあげ、後ろ手に拘束する。

「ぐ、」

銃弾を受けた傷口から血が流れ、地面に滴っている。

「悪いな」

俺は女の首に手刀を落とすと、女の身体から力が抜けた。

***

家に着いて女をベッドに寝かせる。俺の趣味ではないが服を脱がせ、肩の傷を見る。スタンドだから銃弾が体内に残るということはない。傷の処置をして安静にしておけば大丈夫だろう。
銃が見えたということはこの女もスタンド使いなのだろうか。

「う、ここは……」
「俺の部屋だ」
「っ、お前は!」

女ががばりと身体を起こし、戦闘体勢になるが、肩の痛みに顔をゆがめる。姿はまるで威嚇している猫のようだ。

「傷が開くから横になっていろ」
「なんで助けた」
「俺は女に優しいんだ、女を尊敬しているからな」
「私に銃を撃ったのにか?」
「そ、それはいきなりお前が標的の前に現れたから」
「知っている。冗談だ」

女はニヤリと笑って俺を見た。これだけ軽口が叩けるなら大丈夫だろう。

「ところでお前はスタンド使いだな?」
「そうだ」
「何の能力なんだ?」
「秘密だ」
「教えろよ」
「自分に不利になることは言うつもりはない」
「それなら、俺と組まねェか?」
「は?」
「俺と組めば不利になることはないぜ」
「…まぁ、仕事のパートナーは欲しいと思っていたが…仕事はいいのか?お前の仕事は終わってないぞ」
「もうその仕事は必要ない。これから頼むぞ、えーと」
「苗字名前だ」
「俺はホル・ホースだ、よろしくな」

そう言って握手を交わした。

bkm