水撒き(露伴)

「暑いから水撒きしてくれないか?」
「了解です!」

名前は敬礼をして外に出ていった。
窓から様子を見ると名前は道路に水を撒きつつ、自分の脚にもかけている。
水撒きが終わったのか名前の姿が見えなくなる。

「先生!」

玄関から名前が僕を呼ぶ声がする。玄関に行くと名前がずぶ濡れの姿で立っている。

「どうしたらそうなるんだ」
「ホースが暴走しまして…」
「バスタオル貸してやるから乾かせ」
「はーい」
「じゃあ僕は仕事に戻る」

仕事部屋に戻ったはいいものの、名前のことがどうも気になる。やけに静かだ。
もう一度玄関に行くと、名前はバスタオルにくるまった状態で眠っていた。濡れた服も着たままだ。

「起きろ!風邪引くぞ」
「……」

起きる気配はない。どうしてそんな格好で眠れるんだ。
仕方がない、僕が脱がすか。ここまで考えてハッとした。これじゃあ僕がこいつを襲っているみたいじゃあないか。でもこれは名前のためだ。決してこいつの裸を見たいとか、そういうのではない。自分自身に言い聞かせて彼女の服に手をかけた。
裾に手をかけると、名前の身体に触れた。冷えている、早く着替えさせたほうが良い。それにしても、服が身体に張り付いて脱がせづらい。ようやく上の服を脱がせる。

「ん、先生?何して……わああああああ!!」
「おい、落ち着け!何もしてない!」
「じゃあなんで上半身下着姿なんですか?!犯されるうううう!」
「なっ!騒ぐな!近所に聞こえるだろ!!」
「ん〜〜〜〜!」

僕は咄嗟に名前の口を覆った。

「名前が濡れたまま寝ているのが悪いんだ!風邪引きそうだったから着替えさせていたのに」

その言葉でようやく理解したのか名前は静かになりバスタオルを身体に巻きつけた。

「すみません!」
「まったくだ、早く着替えろよ。今度こそ僕は仕事に戻るからな」
「今度こそ?」

痛いところをつかれた。

「っ!また寝るなよ。服を乾かす間、僕の服でも着ていろ」
「はーい」

bkm