肝試し(仗助・億泰)

「ねぇ、夏休みだし肝試ししない?」
「面白そうだな」
「別にいいけどよォ〜どこに行くんだ?」

夏休みの宿題をやりながらこれからの計画を立てていた。

「学校の近くの神社は?あそこなら人の出入りが少ないし。昼間のうちにお菓子置いといてひとりずつ取りに行ってくるのはどう?」
「いいな、それ」
「じゃあ今からお菓子置きに行こうぜー」

ちょうどお昼だったので、昼ごはんを食べに行くついでに神社にお菓子を置いてきた。夜が楽しみだ。

***

「そろそろ行くか?」
「うん!」
「本当に行くのかよ〜」
「億泰怖いの?」
「別にそういう訳じゃあねェけどよォ〜」
「スタンドがあるのに?」
「そうだよな、俺らスタンド使いだもんな〜」
「でしょ?」

目的地につくと昼間以上に雰囲気があった。周りには街灯が一本のみでぼんやりと鳥居を照らしている。鳥居を入ってすぐ階段がある。幽霊より階段のほうが危ない気がする。

「順番、どうする?」
「じゃんけんでいーんじゃねぇか?」
「じゃあ負けた人からね、じゃんけんポン!」

じゃんけんの結果、仗助、億泰、私の順になった。

「じゃあ仗助からね、いってらっしゃい」

手持ちの懐中電灯を持ち暗闇に消えて行った。10分ほどでお菓子を片手に帰ってきた。次は億泰の番だ。少し怖がっていたようだったが、特に怯えた様子もなく帰ってきた。

「ふたりともあまり怖がんないからつまんないな」
「次はお前の番だぞ」
「じゃあ行ってきます!」
「気を付けろよ」
「何かあったらすぐ戻ってこいよ」
「ふたりとも何ともないなら大丈夫だよ」

私は意気揚々と神社の鳥居をくぐった。私は幽霊を信じてないので怖くない。いるなら見てみたいものだ。昼間にお菓子を置いた場所へさしかかった。

「あれ?」

お菓子がない。3人分置いてきたはずなのに。周りを探してみるがやっぱりない。

「これを探しているのか?」

声のするほうを懐中電灯で照らすと有名漫画家がお菓子を片手に立っていた。

「岸辺先生?!こんな時間に何してるんですか?」
「散歩中にお前らを見たからな」
「ストーカー……」
「何だと?!」
「それじゃあごゆっくり」
「おい、これを持っていくんじゃあないのか?」
「あ、ありがとうございます…先生も帰るんですか?」
「ああ」
「下に仗助いますけどいいんですか?」
「いい。なんで僕がそんなこと気にしなきゃいけないんだ」
「ですよねー……あ!仗助と億泰驚かしたいんで協力してくれません?お礼にこのお菓子あげますから」
「僕は子供か」

軽く頭を叩かれた。

「まぁ、協力してやらないこともない。あいつには借りがあるからな」
「やった!肝試しに来たのはいいんですが誰も怖がらなくて…じゃあ私の後ろに立っているだけでいいのでお願いします」
「…それにしても、この時間に遊んでいるのは感心しないな」
「?」
「君も一応女なんだから用心しろと言っているんだ」
「先生って優しいですね。ありがとうございます」
「ふん」
「鳥居見えてきましたね、じゃあお願いします」
「……仕方がないな」

先生の口の端が上がっている。ちょっと楽しそうだ。

「おーい」
「遅ェぞ!」
「何もなかったか?」
「うん、大丈夫だよ。お菓子もあったし」
「じゃあ帰ろうぜ」
「そうだな」

仗助と億泰は鳥居に背を向けて歩きだした。

「ねぇ!」

ここから私の演技力が試される。

「どーした?」
「足跡、聞こえない?」
「気のせいだろ」
「そーだぜ」

先生が後ろに立っている気配がある。

「億泰!」
「なんで俺ェ?!まぁ、いいけどよ」
「足元、照らしてみて」
「お、おう……うわああああ!」
「おい!億泰どうした?!」
「ふふ……っく、」
「名前?何笑ってるんだよ?!」

仗助が駆け寄ってきて私の背後を照らす。

「ゲッ!露伴!」
「失礼なやつだな。名前、僕はもう帰るぞ」
「先生、協力ありがとうございました!」
「協力?お前なァ〜」
「はは、ごめんごめん。ふたりの怖がる姿を見たくて」
「びっくりしたぜェ〜」

笑いながら(主に私が)家への帰途についた。




bkm