吸血鬼(ホル・ホース)

目覚めるとなぜかホル・ホースが吸血鬼になっていた。伝説の通り人の血が好きらしく、さっきから私の首を物欲しそうに見ている。ここで私は日頃からかっていることに対して反省させたいと思った。

「血、飲みたいの?」
「……」

返事はない。でも分かりきったことだ。

「言葉にしたら血をあげてもいいよ」
「……」

普段は女を隣に侍らせている男だ。プライドが許さないのだろう。これだけじゃあつまらない。私はホル・ホースの口の中に指を突っ込んだ。

「んっ、」
「噛んだらだめだからね」

女に対しては優しいから私の言うことに従うだろうという確信はあった。口の中にある指を動かし歯をなぞる。

「名前っ、もう……」
「どうしたの?」

知っていて尋ねるなんて私も私だと思うが、いつものお返しだ。

「言ってくれなきゃわからないなぁ、私鈍いから」
「頼むっ、血が……欲しい」
「どうしようかな〜別に私にこだわる必要はないよね?私の他にも女の人はいる訳だし」
「っ、名前」
「冗談だよ。ほら」

私は手をホル・ホースの口から抜き、髪を退けて首を晒す。ホル・ホースでは我慢の限界だったらしく、即座に私の首に噛みつき血を啜った。



bkm