嫉妬(シュトロハイム)

※男装夢主





上司からの誘いで私は娼館へ赴くことになった。私は女であるため行くことに躊躇いがあったが、行かなければそれはそれで目をつけられそうだったので仕方なく行くことにした。誘われた中にはシュトロハイム少佐もいる。もやもやする気持ちを抑えながら門をくぐった。
始めは宴会のような形式で女性を隣に侍らせながら会話を楽しんでいたが、時間が経つにつれ一人また一人と女と共に個室へ消えていった。最後に残されたのは私とシュトロハイム少佐だけだった。私の隣に座っていた女は私を個室へ連れていこうと私の身体にしなだれかかり、首や頬を撫でる。向かいに座っている少佐の隣の女も同様の動きをしていた。この状態はいつまで続くのだろうか。私は女の相手などできない、そろそろ引き上げようかと考えていた時だった。

「彼と重要な話がある。席を外してくれないか?また後で呼ぶ」

残念そうな顔をしている女たちを最後の一言で喜ばせあっさりと引き下がらせ、私と少佐のみの空間になった。

「機嫌が悪そうだな」
「……いえ」
「あまり話を聞いていなかったように見えたが……妬いているのか?」

図星をつかれ耳が熱くなる。少佐の言う通りだ。私は少佐の隣に座っている女に嫉妬していた。話をしていても内容が頭に入って来ず、視界に入る少佐と女の姿が目に焼きついた。少佐が女の肩を抱きよせる姿、口を緩める表情。自然と膝の上に置かれた手に力が籠る。本当のことを言ってしまいたいが、素直になれない心がそれを許さない。いっそさっきまで隣にいた女のように行動できたら、と思った。

「……少し香水の匂いに酔ったみたいです」
「ここに入る前からそんな様子だったぞ」
「……それで重要な話ってなんですか?」

つい可愛くない態度をとってしまう。少佐が席を立ったかと思うと後ろから抱きしめられる。さっきの女とは異なる感触に胸が高鳴る。私が待ち望んでいた感触だ。
しかし、首に絡みつく腕からさっきの女の香がふわりと鼻をかすめる。

「離してください」
「何故だ?私が嫌か?」
「っちが、……香水が…」
「フッ、可愛いところもあるじゃあないか」
「……」
「さて、帰るか」

予想していなかった言葉に振り向く。

「さっき、また呼ぶって……」
「気が変わったのだ。私の家に来い、香水も流すといい」

少佐がここに残らないと聞いて安堵した。表情に表れていたのか、少佐は少し口元を弛め私の頭を撫でた。勘定を済ませ、私と少佐は馬車に乗り込み、少佐の家に向かった。

bkm